トラウマ――人ヲ殺シタ経験――
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からなければ、この鋼殻の怪人による被害は甚大な物になっていただろう。
(こうするしか無かった。僕が殺すしか無かったんだ……)
頭では分かっているのに、心がザワついた。
努めて冷静でいようとする脳が、要に命令する。
後に駆けつけるであろうプロのヒーローに、この怪人の死骸を渡せば、それで終わりだ。
(いつかは自分もヒーローになる予定なんだ……。初めて怪人を殺すのが、少し早まったからって何だって言うんだ……)
腕を引き抜く。
支えを失った死骸が、ズルリと地面に落ちてうつ伏せに床に寝そべった。
何で自分がそんなことをしたのかは分からない。
ただなんとなく、要はその亡骸をひっくり返し、仰向けに横たわらせた。
すると鋼殻の怪人の頭部を守るヘルメットの様な外郭が、ズルリと剥がれ落ちて。
――中に、血を吐いて白くなった少女の死に顔が見えた。
ねっとりと絡みついていた怪人の血液が、外気に乾いて腕にまとわりついてくる。
何故かその時、その緑色の血液が、要には真っ赤に見えた。
「っ――――――――――」
要が覚えていられたのはそこまでだった。
目の前が真っ暗になって、気が付くと病院のベッドの上に居た。
後で聞いた話だと、要は悲鳴を上げてその場に気絶してしまったらしい。
そして、要は――。
(そして、僕は……)
初めて怪人を殺した日から――。
「ヒーローに、なれなくなった……」
こうして、誰よりもヒーローとしての未来を切望されていた神童は、戦いの世界から姿を消した。
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