第二百三十六話 生きていた者達その八
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「御主達の仕業じゃな」
「おのれ、気付いたか」
「少し前からな」
そうだとだ、信長は自分を憎しみに満ちた目で見据えてきている老人に答えた。
「御主達のことにな」
「我等のこともか」
「魔界衆というそうじゃな」
この名をだ、信長はここではじめて出した。
「伊勢神宮や比叡山の奥にあった書に書いておったぞ」
「くっ、誰が書き残した書か」
「最澄上人や過去御主達と戦ってきた高僧や英傑達がな」
「そこまで知っておるか」
「御主達これまで天下の裏で色々と暗躍し乱そうと狙っておったな」
「そして乱してもきたがな」
「そうじゃな、しかしじゃ」
それはとだ、信長はさらに言った。
「それも終わりじゃ」
「我等を倒すつもりか」
「はっきり言おう、そのつもりじゃ」
まさにという言葉だった。
「これよりな」
「ど、どういうことじゃ?」
ここでだ、明智の兵達の動きが変わった。信長達が生きていたことへの驚愕から彼の話を効いたうえでの狼狽に変わった。
「これは」
「上様は生きておられるしじゃ」
「しかも魔界衆じゃと?」
「何者じゃ、それは」
「あの者達のことらしいが」
「確かに妙な奴等じゃ」
「あの者達はおらんかった」
老人達を見ても言うのだった。
「急に陣中におってな」
「殿のお傍にいつもおった」
「怪しい奴等とは思っていたが」
「何者なのじゃ」
「魔界衆とは何じゃ」
「一体」
「御主達謀反を起こす気がないのならじゃ」
信長はその狼狽する明智の兵達にも言った。
「わしの言葉を聞け」
「は、はい。我等はです」
「謀反は考えていません」
「何かわからないままです」
「今ここに来ましたが」
明智の兵達は信長のその言葉にはっとなって返した。
「上様にご無礼を働きました」
「まことに申し訳ありませぬ」
「よい、しかし謀反を起こさぬのならじゃ」
それならとだ、信長は彼等にまた言った。
「そこにいる暗い服の者達を捕えよ」
「わかりました、では」
「これよりこの者達を捕らえます」
こう言ってだ、そしてだった。
明智の兵達は老人達を囲み槍を立てた。そのうえで襲おうとするが。
老人の周りの者達がだ、彼に言った。
「御前、こうなってはです」
「致し方ありませぬ」
「ここはです」
「下がるべきかと」
「今度こそはと思ったがな」
老人は実に今井ましげな声と顔で言った。
「ならなかったか」
「無念ですが」
「そうです」
「ですから今は」
「下がるべきかと」
「まだ兵はあるし機会もあろう」
老人は自分に言い聞かせる様にして言った。
「ならばな」
「はい、ここは」
「下がりそのうえで」
「動きましょう」
「次の動きにあたりましょう」
「そうしよ
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