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真田十勇士
巻ノ二十四 鎌倉その十四
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「だからな」
「上杉家と手を結ぶことは」
「難しいやもな」
「そうなりますな」
「しかし徳川家とはな」
 またこの家のことを話すのだった。
「手打ちとしよう」
「では重臣の方々とも」
「話をする」 
 こう言うのだった。
「あの家とは容易に手を結べるしな」
「ですな、今川殿とのこともありますが」
 北条家は元々今川家の家臣だった、それから世に出たのだ。だから昔から今川家とは懇意だったのだ。
 しかし家康はその今川家に背いた家なのだ、北条から見ればだ。しかしそれでもなのだ。
「ですが」
「うむ、それでもな」
「氏真様にもよくして下さっていますし」
「家康殿自身はな」
「はい、氏真様とも幼い頃から親しく」
「氏真殿が国を出ても快く迎えた」
「だからな」 
 それで、というのだ。
「よいのじゃ」
「ですな、徳川家とも」
「これでよい」
 また言った氏政だった。
「手打ちでな」
「さすれば」
「さて、しかし真田家の次男か」
 ここで氏政は手を結んで言った。
「相当な御仁か」
「はい、まさに天下の傑物とのことです」
「その評判が出ておるか」
「それがしの聞いたところです」
 評判ではなく、だ。それによるものだというのだ。
「相当な御仁です」
「そうか、では真田ともな」
「戦はしませぬか」
「あの家も信濃、西国にあるからな」 
 また東西で分けてだ、氏政は述べた。
「特によい」
「左様ですか」
「むしろ徳川家と真田家に争ってもらえば」
「それでよいと」
「徳川家とは手打ちをし真田家とも揉めぬが」
「しかし両家が争うことは」
「別によい」
 このことについてはだ、氏政は何でもないと言って述べた。
「手を結んでも徳川家にそこまで力は貸さぬ」
「むしろ真田家と争って力が弱まれば」
「そして真田家も弱まればな」
「それでよいですな」
「うむ、それでよい」
「そういうことですな」
「そういうことじゃ、では暫くしたら信濃と甲斐から兵を引く」
 徳川家と手を結んでというのだ、そう話してからだった。
 氏政はあらためてだ、風魔に言った。
「御主は暫くは小田原におるが」
「それでなのですが」
「真田家の次男を見たいか」
「実はそうお願いするつもりでした」
「では見て来るのじゃ」
 氏政は風魔にすぐに命じた。
「よいな」
「有り難きお言葉、さすれば」
「その様にな」
 こう氏政と話してだった、そのうえで。
 風魔は己の屋敷に戻った、そうして姿を見せないが気配はそこにある彼等に対して笑みを浮かべて言った。
「幸村殿が小田原に来られればな」
「はい、その時はですな」
「棟梁ご自身が、ですな」
「幸村殿を御覧になられますな」
「そして家臣の方々も」

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