第十三話:決戦前夜、追憶
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けることを確信している。
「ほらよ」
「ああ、すまないね。ありがとう」
差し出されたカップには黒色の液体。現実世界の珈琲に似ている。
飲んでみると、確かに珈琲の風味を感じた。
「この世界の食い物や飲み物にはハズレが多いが、それが一番珈琲に近い味だ」
「なるほど。ちなみに僕はブラックは苦手なんだ」
「おっと、これは失礼。テーブルの上にミルクらしきものがあるから、それで調節してくれ」
二人の間に遠慮や遠回しな配慮なんてのはない。だから互いに踏み込み過ぎないし、かといって遠ざかる訳でもない。
気の置けない友人、というのが二人の正しい関係だ。
「……………なあ、レン」
「…なんだ?」
それでも。
ディアベルには、聞かなければならないことがあった。例え彼の心の奥底に踏み込んだのだとしても、現場指揮を行っていた彼には、知る義務があった。
「ネロさんを始めとした、アイギス壊滅の真相を知りたい」
先に行われたラフコフ掃討戦。未曾有の大混戦となったあの凄惨な殺し合いで、アイギス含む多数のプレイヤーが亡くなった。
その際に攻略組連合の指揮を執っていたのは血盟騎士団アスナと聖竜連合ディアベルだ。
あの部隊を率いていた者として、せめて、なぜ彼らが死ななければならなかったのかを知る必要があった。
勿論、その事情はレンも分かっていた。空になったカップをソーサーに戻して、背凭れに体重を預ける。
「????第五十層攻略作戦。かつてない程に苦戦を強いられ、最も多くの死者が出た悪夢の攻略作戦。
あれを経て、他人を『護る』ことのできなかったあいつらは、酷く自分達の非力さを悔やんだ」
第五十層。二つ目のクォーターポイントにして、レンが英雄たる証を手に入れた作戦。だが、その余りにも悲惨な戦況から、一部攻略組からは触れてはならぬ話とまで言われている。
その作戦で、『護る』ことを信条にしていたアイギスのメンバーは、自分達に課された役目を満足に果たせず、ただレンとヒースクリフの大立ち回りを見ていただけだった。
「それからなんだろう。あいつらが、オレに隠れてレベリングや装備を整える為の資金調達をするようになったのは」
勿論、レンがそれに気づかないはずもない。だが、アイギスを最も近くで見ていたのはレンだ。故に、彼らの抱いた葛藤や後悔はレンが一番理解していた。
だから、止めることはできなかった。
「朝は迷宮区に篭ってクエスト三昧。昼は一度戻ってきて入手したアイテム等の換金。間髪入れずすぐに迷宮区入り。正直、どこかで誰かが命を落としても不思議ではないほど、無理をしていた」
それでも、誰一人欠けることなくやって来れた。やって来れて
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