第十三話:決戦前夜、追憶
[5/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
あまり人のいる所で言わないでくれ給えよ?まだ私はここを離れる気はないのだよ」
普段見せない棘のある態度でヒースクリフを詰る。
窓際の壁に背中を預けるレンは、今にも斬りかかりそうな程剣呑な光を瞳に宿していた。
「……そういえば、君が私の正体に気付いた理由を知らないな。良ければ、教えてくれるかな?」
過去に、ヒースクリフとレンが誰にも知られることのない戦いを行ったことがあった。
正しくこの世界を左右する戦いであったが、惜しくもレンは敗北を喫し、そして『糧』を失い失望したため、黒鉄宮へ幽鬼のような足取りで向かったのだ。
「ラフコフ掃討戦。消えてくネロが、最後にオレに言い残したんだ。『ヒースクリフは茅場晶彦だ』ってな」
ネロが何故、その答えに辿り着いたのかはレンには分からない。
ただ、掃討戦の直後、問い詰めたヒースクリフが自ら名乗ったのだから、それが事実だということだけが分かった。
「…………そうか、やはり」
間をおいて、一人だけ訳知り顔で頷いたヒースクリフのその呟きはレンの耳に届くことはなかった。
「レン!」
それよりも早く、扉を乱暴に開け放ったキリトの声がそれを掻き消してしまったのだ。
「偵察隊が全滅したって聞いたぞ!」
「取り敢えず落ち着けキリト。揃い次第説明する」
「他に誰か来るの?」
「次はクォーターポイントだからな。攻略組の中でも一大ギルドの長達を呼んだ」
当然の如く言い放ったレンに、アスナは絶句するしかなかった。
勿論、アスナも今回の攻略作戦が特に厳しいものになることは予想している。その上で、様々な攻略ギルドで協力しなくてはならないことも。
だが、人の心は理屈よりも感情が勝るものだ。故に、基本的に仲が悪い有力ギルド同士で大パーティを組むのは至難の技であったはずなのだ。
それでも、レンはそれをやってのけた。聞けば、送り込んだ偵察隊も五ギルド以上の連合だったという。
顔が広いのか、それとも彼の手腕なのか。恐らくどちらともだろうと、アスナは考えた。
† †
「急な呼び出しにも関わらず集まってくれたことに感謝する」
あれからしばらく。
血盟騎士団のホーム内部の一室。紅と白に彩られた円卓に座るプレイヤーを眺めて、レンがそう切り出した。
レンとヒースクリフの招集に応じたのは、四ギルドのギルドマスターに、キリト、アスナであった。
どこからか情報を嗅ぎつけてきた某猫と鼠が突撃してきたが、丁重に放り投げて今に至る。
「あー…僭越ながら、今回の攻略作戦の指揮をヒースクリフから承ったレンだ。よろしく頼む」
基本的に、階層攻略の際は合同ギルドの団長から一人の総隊長を決めるという取
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ