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ソードアート・オンライン 少年と贖罪の剣
第十三話:決戦前夜、追憶
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仲が良いことは知ってたよ。けど、まさか結婚するとはなぁ」

「……やべ、情報提供してしまった」

「にへへー、いいネタをどうもー」

 胸の内でキリトとアスナに謝罪しながらグラスに入ったお茶のようなものを飲み干す。

「まあ、冗談だよ。あの二人に迷惑かけるようなことはしないって」

「どうだか」

「む、どういう意味?」

「さんざん迷惑かけてきただろうに」

 時刻は夜の八時を回った。どうやらユメはここに居座る気満々なようで、レンは追い出すことを初めから諦めていた。
 ユメの作った夕食を堪能して、今は二人でソファーに凭れていた。

「ケッコン、かぁ……」

 なにか意味あり気に呟くユメを他所に、レンは新聞(のような情報誌)を広げた。

「ね、ねえ……レンはどう思う?」

「何がだ?」

「け、ケッコンについて……」

 ケッコン、と聞いてまず浮かんだのはレンの両親の姿だった。
 本当の両親は彼が幼い時に亡くなってしまったから、もう覚えていない。いま思い浮かべたのは、義理の両親であった。

「……そうだな…羨ましい、と思ったな」

「う、羨ましい…?」

 レンを児童養護施設から引き取った家族は、全員がある病に悩まされ、闘いながらも確かに『幸福』そうであった。それこそ、レンがその輪に入り込むことを躊躇してしまうくらいには。

「オレの家族の事なんだけどな。なぜ、そんな幸せそうなのか。なぜ、そんな笑顔なのか……ずっと疑問に思ってるんだ」

 しかし、レンが輪の中に入るのを躊躇っていることに気づいた両親は、惜しげもなくその愛情をレンにも分け与え、そして本当の家族のように接してくれた。
 レンの義理の妹となった二人の少女も、最初こそ怖がられて遠巻きに見られていただけだったが、レンがSAOに囚われることになる前には本当の兄妹のようになれていた。

「………なあ、ユメ」

「…うん。なに?」

 ソファーから身を起こして、再び満たしたグラスを煽る。

「絶対、帰ろうな」

「うん。絶対、一緒にね」

 ユメもまた、ホットミルクをひと啜りする。
 穏やかな空気のまま、時が過ぎていった。




「ねえ、レン…?」

 少しの明かりを残して、ベッドに入ったユメはソファーに寝転んだレンに声を掛けた。

「一緒の布団には入らんぞ」

「そ、それはもう諦めたから。そうじゃなくてさ」

 歯切れの悪くなったユメをソファーの上から見る。どこかバツの悪い顔をしているのは、今から聞くことに関係があるのだろうか。

「あのさ、レン」

「……なんだ?」

 思わず身構える。こういう時のユメは、突拍子もないことを言い出すことが多いのだ。



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