七話:真夜中
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れも大分中和されている。
それに何よりも、グレアムが絵に書いたような優しいおじさんだったこともある。
重責から解放されて本来の性格に戻れたグレアム。
その姿からはやては、優しい人間ほど冷酷になれるのだと養父の面影を垣間見た。
「それに、おとんの話も聞けるしな」
「お父さんの昔話ですね……」
何よりも、グレアムは最も古くから切嗣を知る人物である。
養父の本当の人柄を知る上でも、追いかけるための情報を得るためにも非常に有益である。
父親の昔を知っている人物という点ではグレアムはまさにはやての祖父に当たるような役割を担っているのかもしれない。
「ま、それやったら早よ寝んといけんな」
「はい、お休みなさい」
「お休みな、シャマル」
湯呑をシャマルに手渡し、大きく背筋を伸ばすはやて。
今日やり残したことは明日にやろうと、本に栞を挟み閉じる。
そして、自らの足でしっかりと立ち上がりヴィータが眠るベッドに向かう。
「……おとん、私一人で歩けるようになったんよ」
ボソリと寂しげに呟きベッドの中に潜り込む。
そのまま目を閉じていると、寝ぼけているのか、ワザとなのか。
ヴィータが慰めるようにはやてに抱き着いてくるのだった。
ある管理世界のホテルの一室で切嗣は黙々と世界情勢の書かれた資料を読んでいた。
時折、あまりにも愚かすぎる人間の業を見て眉を顰めるが、それ以外では表情の変化はない。
部屋には切嗣以外の人間はおらず、沈黙だけが支配している。
しかし、それを破る声が響いてくる。
『次はどの世界に行くのだ、切嗣?』
「マリドーラという世界だ。管理世界ではあるが、昔から小さな民族紛争が絶えない場所だよ」
『……哀しいな』
哀しい、仮の器に入ったリインフォースはそう呟く。
それは何千年と続く、終わらぬ人の争い。
そして、再び誰かを殺さなければならない彼の残酷な宿命に対しての言葉。
「本当にね。人類は石器時代から何一つ変わっちゃいない。まあ、僕が言える立場じゃないけどね」
作業の手を止めて、自嘲気味に笑う切嗣。
その姿にリインフォースはさらに哀しい気持ちに襲われる。
この半年ほど近くで彼を見続けてきたが、彼は自分自身を欠片も愛してはいない。
叶うことなら今すぐにでもその心臓を引き裂いてしまいたいと願っているのだ。
それでもなお、生き続ける切嗣の姿は直視できるものではなかった。
『……今回も私を置いて行くのか?』
「当然だ。君の安全を守るのが契約だ。戦地に連れていくような馬鹿なマネはできない」
普段は基本的に切嗣がリインフォースの傍にいることになっている。
しかしながら、切嗣はリインフォ
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