暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜紫紺の剣士〜
アインクラッド編
7.改めて
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「おっ疲れーー?」
バシン!と背中に衝撃を受けた。なんか前にもあった気がする、と思いながら後ろを振り向くと、これまたミーシャが、前も見たような笑顔を浮かべていた。
「いや、君すごいねぇ!片手で両手剣使う普通?使わないよ!ソードスキルも使えないのに!」
「筋力値を上げれば両手剣だろうと片手で使える。通常技なら普通に使えるし、ソードスキルなら両手に持ち変えればいいだけだ」
「いやぁ、でもすごいッスよ!」
ウンウン、とアンとシルストが横で頷く。
「・・・ミーシャ、そろそろ帰りたい」
1人≪魔人ミヒイショ≫からドロップしたアイテムを確認していたタクミがぼそっと呟く。
「おっけおっけ!帰ろ!迷宮区抜けてフィールド通らないといけないけどね!」
いつもの掛け声もいつもより下がりぎみなのは、恐らく気のせいではないだろう。フッとため息を吐くと、俺はミーシャにある交渉を持ちかけるために話しかけた。


***



迷宮区に一番近い圏内村≪ディオラ≫に着いた頃には、もうすっかり日が暮れていた。いつになく疲労感を感じ、溜め息を吐く。さすがに、エンカウントしたモンスターをすべて1人で倒すと疲れる。
「打ち上げは明日においといて、今日はみんなもうさっさと宿借りてご飯食べて寝ちゃおう!疲れたでしょ!」
そういうミーシャは全く疲労感を感じさせない。ナツやシルストも、そんなミーシャにつられて笑みをこぼす。
「あったかいご飯が食べたい・・・あと柔らかいベッド・・・」
疲労困憊といった様子で呟くアンを、ミーシャは笑いながら優しく叩いた。



適当に入った店での夕食は、質素なサラダとブラウンシチューだった。疲れているだけあって、質素な食事でもいつもより美味しく感じる。しばらくの間、俺を含めパーティーメンバーは無言で食事を続けた。
「さて」
食後に頼んだお茶のカップを音をたてて机に置き、ミーシャはニコニコと笑いながら俺を見た。
「聞いてもいいかな?昨日の答え」
「ギルドに入るか入らないか、か」
「そ」
ミーシャ以外の4人が微妙に姿勢を正したのが見えた。その姿には僅かに緊張が現れている。そこまで緊張するものだろうか。
俺も持っていたカップを置き、少しだけ考える。
今まで、仲間は要らないと思っていた。それは、今も変わっていない。しかし、紫色の魔人に一太刀浴びせられた瞬間によぎった死の予感と、それを打ち砕いたミーシャの剣。そのとき浮かんだ、安心感。
あの時ミーシャ達がいなかったら、俺はきっと死んでいた。

このときの俺はきっと、心のどこかで無意識に求めていたのだろう。俺という人間を、受け止めてくれる人を。仲間など要らないと口にしながらも、求めずには居られなかった、愚かな俺を。

その言葉は、以外にもすんなりと、言えていた。


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