番外編
あなたの横顔
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先輩が行方不明になって一ヶ月が経過した。私と一緒に初詣に行ってくれた日に、私と別れた後友人の家に行った先輩は、そのままその友人と共に消息を絶った。
先輩と一緒に初詣に行けた嬉しさで浮かれていた私は、翌日、学校で耳を疑った。
――3年生の橋立と岸田が、昨晩から家に帰ってないそうだ
先輩は、夜遊びをするようなタイプではない。ハメを外して遊ぶようなタイプでもない。ごくごく普通の中学生だ。
その先輩が、友人とともに消息を断った。ご両親も思い当たる節がなく、教師陣も二人の行き先にまったく見当がつかなかった。クラスメイトたちの間でも、先輩と先輩の友人の行き先や失踪した原因に、まったく思い当たる節がないと言っていた。
周囲には、最初は思春期にありがちな保護者への反抗からくる、ちょっと長い家出だと思われていた。先輩がご両親と仲がいいことをよく知っていた私は、そんなはずはないと思っていたけれど……3日経過しても帰ってこず、一週間経過しても足取りが掴めず、二週間が経過しても、手がかりすら掴めない状況だと聞いた。
一週間が経過した頃、私を訪ねて数人の刑事が家を訪れた。聞けば、吹奏楽部の面々が『橋立先輩のことは、秦野さんがよく知っている』と答え、警察は私なら何か知っているのではないか……と手がかりを求めてきたのだ。
「……私は何も知りません」
「そうですか。分かりました。何か思い出した事があれば、我々に知らせてください」
「はい……」
知っていれば、私は今すぐ先輩のもとに向ってる。
先輩は、今年の梅雨の時期ぐらいから少し変わった。梅雨時から秋口まで、先輩は毎日がとても楽しそうだった。あの時先輩は部活に打ち込んでおり、練習の時は、いつも真剣な眼差しで楽譜と指揮を見ていた。充実した練習ができている証拠だと、その時は考えていた。
違和感を覚えたのは、先輩が部活を引退してからだ。私は、先輩が毎日楽しそうなのは部活に打ち込んで毎日が充実しているからだと思っていた。部活を引退してしまったら、少し元気がなくなるものだと思っていた。
ところがそうではなかった。先輩は部活を引退したあとも、とても楽しそうに毎日を送っていた。明らかに笑顔が増え、放課後は毎日楽しそうに帰路についていた。何が先輩の生活を充実させているのかは分からない。だがそれが、私を含めた部活ではなかったことに、私は少なからずショックを受けていた。
先輩がいなくなって三週間を過ぎた頃、先輩のご両親が私を訪ねてきた。お父様の方はまだそうでもなかったが、お母様の方は元気がなく憔悴しきっておられた。
「秦野さん。あなたが吹奏楽でシュウととても仲がよかったことは聞いています」
「……」
「もし、息子のことで何か知っていることがあれば……私達
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