番外編
あなたの横顔
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分の心を傷つけないで下さい。私でよければ、何度でも先輩の頭を撫でます。私なら、いつでも先輩を抱きしめます。だからお願いです。私に、あなたの隣にいさせて下さい。その人の代わりでいいから、私を愛して下さい。
でも先輩は、それでも私に横顔を見せ続けた上、今はその横顔すら見せてくれなくなった。
これは、業を煮やした私が少しでも先輩の気を引きたくて『超絶鈍感クソ野郎』と言い出した罰なのだろうか……一緒に初詣に行き、個室で一緒に甘酒を楽しんだ日にいなくなったのは、そのあてつけなのだろうか。
私には分からない。自意識過剰と言われればそうなのかもしれない。だがそれでも、私ではない誰かを見つめる横顔すら見せてくれなくなった先輩を思い出す度に私は、これは自分の咎だと思わずにはられなかった。
「姉さん、まだ神社に来ていたんですか」
聞き慣れた声が聞こえ、私は声がした方を振り向いた。そこにいたのは、小学生ぐらいの背丈で、私と同じ長い黒髪の、パッチリとして意思の強い目をした少女だ。先輩が行方不明になってしばらく経った頃にこの神社で私と出会い、私の家族が保護したその少女は、自らの名を『朝潮』と名乗った。
「あ、うん……どうしたの?」
「いつもの時間にご帰宅されなかったもので。お母様が心配されて、私に周辺を見てくるようにと」
「そっか」
「はい」
この子は、私のことを『姉さん』と呼び慕ってくれる。髪型もポニーにすれば私そっくりだし、どことなく顔も似ていて、不思議と私と相性のいい子だ。
「姉さん」
「ん?」
「ちょっとしゃがんでくれますか?」
歩くのを止め、私は朝潮に言われたとおりにしゃがんだ。その途端、朝潮が私の頭を撫でた。
「……?」
「姉さん、とても辛そうでしたから」
「……」
「私ではお力になれそうもないので……せめて何かの励みにと」
真面目な顔で私の頭を撫でる朝潮の撫で方はとてもぎこちなく、でも私への心遣いが伝わってくる撫で方だった。
「……んーん。朝潮ちゃん、ありがとう」
「いえ。このようなことでしか感謝を表すことか出来ず……私でよければ、いつでも姉さんのお力になりますから!」
一生懸命にそう答える朝潮の姿に、先輩に対して『私が代わりになります』と訴える自分の姿がかぶった。私達は、容姿だけでなく性格も似ているのかも知れない。
「……プッ」
「?」
「いや、私たちは似てるなーと思って」
「姉さんと私が……ですか?」
「うん」
私は朝潮の手を取り、家路を急いだ。今日の夕飯のメニューは何だろう……朝潮ちゃんの身体からスパイスの香りが漂ってくるあたり、今日はカレーなのかな……
先輩。帰ってきて下さい。あなたの帰りを待つ人が大勢いるんです。その人た
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