6部分:第六章
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第六章
「けれどね」
「けれど?」
「やっぱり何でもないわ」
言わないのだった。とても言えなかった。
「悪いけれど」
「まあ何があったのかは聞かないけれど」
「原爆でも落ちたみたいな感じだけれれど」
皆かなり滅茶苦茶なことを言っていた。今の茉莉也の様子を見てだ。
「まあとにかくよ」
「今日あんた日直よ」
「あっ、そうだったの」
言われてこのことに気付いたのだった。
「今日だったの」
「そうよ。今のうちに日誌取りに行った方がいいわよ」
「善は急げよ」
「そうね。それじゃあ」
とりあえず朝は今起こったことが自分ではとても信じられなかった。そしてその放課後。放課後になるまでこれだけ長い時間だとは思ったことがなかった。その長い時間を過ごしてやっとその体育館裏に行くとだった。そこに同じ学園の知っている相手がいたのだった。
「あれっ、刑部君」
「ああ、時任」
同じ学年だがクラスの違う刑部義次だった。彼がそこにいた。背が高く日本人らしい切れ長の目をしていて黒い髪を左右で分けている。全体的にすらりとしている。彼はバレー部である。
「あのさ」
「まさかと思うけれど」
ここで茉莉也はその彼に対して言うのだった。まだ世界が赤くなっていない昼下がりが終わってきた中で。
「あの手紙って刑部君が」
「ああ、そうさ」
そのことを自分から認める彼だった。
「誰にも言わなかったけれどさ、俺さ」
「ええ」
「ずっと時任のことが気になってたんだ」
その頬を少し赤らめさせての言葉であった。
「時任が。特に最近な」
「最近?」
「いや、髪ものばしてるしさらに可愛くなったし」
こう彼女に話してきた。
「それにさ。元の御前のままでもあるし」
「元の私のままだし」
「それでもう自分の気持ちを抑えきれなくなって」
その赤らめさせた顔を照れ臭そうに俯けさせる。そのうえで茉莉也に対して言葉を続けてきた。
「それでまああの手紙を」
「そうだったんだ」
「駄目かな」
照れ臭そうな態度のまま茉莉也に尋ねてきたのだった。
「それでさ。あの、御前と」
「私でよかったら」
これが彼女の返事だった。
「私みたいに小さい娘でよかったら」
「俺、小柄な女の子好きだし」
それについてはこれで終わりであった。
「だから気にしないからさ」
「男の子みたいだけれど」
「何処がだよ」
それは否定する彼だった。
「何処が男の子なんだよ。女の子らしいじゃないか」
「そうなの」
「活発で元気でさ」
彼にとってはそれが女の子らしいものであるようだ。
「それに明るくて気が利いていて。誰よりも女の子らしいよ」
「私が女の子らしい」
「誰よりも可愛いしさ」
また実に率直な言葉であった。誰もが
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