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大海原でつかまえて
12.新生活スタート
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ろん戦略的な意味合いからも、全力で深海棲艦の渡航設備を取り返す……でもいいか。二人共そのことだけは覚悟しておけ」

 提督との話が終わって数時間後、奪還部隊が出撃していった。旗艦を任されたビスマルクさんが……

「ヒエイ、この前は助けることが出来ず申し訳なかったわね。でも今回は、あなたのシュウが元の世界に戻ってしまってもいいように、必ず渡航設備を取り返してくるわ!」

と姉ちゃんに言ってくれていたが、出撃してさらに数時間後、やはりすでに渡航設備は移転されていたとの通信を受けた。姉ちゃんとの約束を果たすためそのまま捜索に入ろうと主張するビスマルクさんと、帰還命令を出す提督の間で、かなりの言い争いがあったのだと、あとで那智さんが教えてくれた。

 そして数日後、提督の頑張りで僕は司令部からのお墨付きをもらい、叢雲たんチュッチュ鎮守府の正式メンバーとして岸田と共に名を連ねることになった。当初、司令部は許可を出さなかったらしいのだが、提督がかなり強引な揺さぶりを司令部にかけ、無理矢理認めさせたとの話だった。

「とりあえずこれでお前も岸田と共に正式なメンバーだからな。これからは気兼ねなく鎮守府にいてくれ」
「ありがとう。でもそんな強引なことして提督は大丈夫なの?」
「俺はこの界隈でもっとも戦果を上げる叢雲たんチュッチュ提督だ。だからある程度なら無理も聞くんだよ」
「ぶふっ」
「笑うなッ!!」
「いや、だって……真面目な顔してカッコイイこと言ってるのに“叢雲たんチュッチュ”って……ブフォっ」
「岸田ぁぁああアアアアん?!!」

 そんなわけで、今後僕はこの鎮守府の一員となる。とりあえず楽器が吹けるということで、艦娘のみんなの慰安と福利厚生の一環として、音楽教室でも開いてみるかと岸田と提督にアドバイスされた。鎮守府の一角を間借りして教室を開いてみることになったのだが……。

 正直、不安でいっぱいだ。いつか姉ちゃんが言っていたように、提督をはじめ、ここの人たちは本当にいい人たちだ。こんな僕にも興味を持ってくれて、暖かく、楽しく接してくれる。でも僕は、この人たちの役に立てるのだろうか。日々命がけで戦う人たちの力になれるのだろうか……

 そして僕と岸田は、いつの日か自分たちの世界に帰ることが出来るのだろうか。ここでの生活に不満はない。最愛の人も隣りにいる。でも自分の世界にも大切な人がいる。父さんや母さん、秦野といった、僕のことを心配してくれる人がいる。今頃みんなは心配してパニックになってやしないだろうか。せめて無事だけでもみんなに伝えたい。でもそれがいつになることやら。

 このことを一度岸田と相談してみた。だが岸田はすでにある程度割り切っているようで……

「おれも元の世界が気にかかる。でも何も出来ない以上、そればっか
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