12.新生活スタート
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ってしまったら、私たちはシュウくんと会う事が出来ないということですね」
「その通りだ」
提督は続けて話をしてくれた。今回来たのが岸田だけであれば、まだ話は分かりやすかった。岸田は提督と鎮守府に名前をつけるぐらいに叢雲が好きだ。そして岸田本人が、こっちに来るときに叢雲に会うことを楽しみにしていた。結果としてそれは今も叶ってないわけだから、岸田が今この世界にいる理由は、『まだ叢雲に会ってないから』だというのが想像出来る。
分からないのは僕だ。僕は確かにあきつ丸さんに連れられてこの世界に来る時、『ねぇちゃんを助ける』という明確な理由があった。そして、それは達成された。ならなぜ僕はここにいる? 他の者の帰還に巻き込まれた形で世界を渡った時は例外なのか? それとも他に元の世界に戻る条件があるのか?
そして戻ってしまったら最後。僕はこっちの世界に戻れなくなってしまう。渡航設備を持たない鎮守府からも、僕の世界に手を出すことは出来ない。仮に僕が元の世界に戻って姉ちゃんと離れてしまえば、再び姉ちゃんと会えるのはいつになるのかわからなくなる。そのまま二度と会うことなく、一生を終えることになるかもしれない。
僕の帰還に姉ちゃんを無理矢理に同行させる事は可能だ。事実、僕と岸田はあきつ丸さんの帰還に無理矢理同行する形でこっちの世界に渡ってきた。仮にこちらの艦娘たちとの交流を持ってなければ、僕は簡単にその決断を下すことが出来ただろう。消える寸前に姉ちゃんの手を握って、無理矢理に僕の世界に連れて行くという決断をしてしまっているだろう。
でも、僕はみんなと仲良くなってしまった。この鎮守府のみんなのことを知ってしまった。金剛さんや加賀さんたちと、戦いを通して心を通わせてしまった。そんな人たちと姉ちゃんを引き離すことが、今の僕には出来なかった。
「あるいは……キミの本当の目的ってのが、実は違ったりしてな」
「へ?」
「人間ってのは、表面上は『○○したいっ』て考えても、心の奥底では全然別のことを求めてたりする場合もある。ひょっとしたらキミも、表面上では『姉ちゃんを助けたい』て考えていたとしても、実は心の奥底では全然別なことを願っていたのかもしれん」
そう言うと、提督は自身のコーヒーを飲み干し、カップをタンッと勢い良くテーブルに置いた。それは思ったより勢いがあり、ぼくのカップが揺れ、中にまだ残っていたコーヒーが少しだけ零れた。
「比叡、シュウ。単刀直入に言うぞ。今シュウは、何がトリガーになって元の世界に戻るか分からん」
「シュウくん……」
「う……」
「今こうやって話をしてるこの瞬間に、突然帰ってしまうかもしれない。そしてそうなってしまえば、深海棲艦の渡航設備を取り返さない限り、お前たちはまた離れ離れだ」
「……」
「もち
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