暁 〜小説投稿サイト〜
フェイト・イミテーション ~異世界に集う英雄たち〜
ゼロの使い魔編
三章 王女からの依頼
架の休日<後編>
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る。とにかく、一般人が見るにはあまりに痛々しいものだった。

「どうしたんですかその傷!!」
「いやこれは、というか落ち着けシエスタ。」
「落ち着いていられますか!?よく見せて下さい!」
「ま、待て!そんなに前のめりになると・・・」
「え?わわっ、きゃあああ!!」

 もっとよく見ようと架を引き寄せようとしたのだが、風呂周りの濡れた地面に足を滑らせ、そのまま風呂に落ちてしまった。

「だ、大丈夫かシエスタ?」
「は、はい・・・。」

 架が慌てて抱えるが、着ていたメイド服がずぶ濡れになってしまった。
 すぐ近くに架の体があることに顔を赤くするシエスタだったが何か思いついたようにニマッと笑った。

「あ〜あ、こんなに服が濡れちゃって・・・乾かさないといけませんね〜。」
「シエスタ?」
「せっかくですから、乾かす間私も入っていいですか?」
「・・・はい?」

 驚く架をよそにシエスタはいそいそと服を脱ぎだした。

「お、おい!シエスタ!」
「平気ですよ。この時間誰も来ませんし、暗いのでよく見えませんし。」
「そういう問題ではないのだが・・・。」

 シエスタは気持ちよさそうに湯舟に浸かると架は気まずそうに背を向ける。その背中にもいくつもの傷跡が出来ていた。

「カケルさん、それ・・・。」
「心配いらない。どれも昔につけた傷だ。」
「昔ってカケルさんのいた国で、ですか。」
「ああ。」

 シエスタは考える。架の年齢は見た感じだと自分と同じくらいである。にも拘わらずその体はまるで歴戦の戦士のような傷跡。一体どれだけ壮絶な人生を送ってきたのだろう。

「カケルさん。」
「ん?」
「カケルさんの国ってどういう所何ですか?」
「そうだな・・・。いろいろあるけど、戦争はないし人々も差別されない平和な国だな。」

 それでその傷は矛盾してません?と思うシエスタだったが黙っていた。

「カケルさんは帰りたいって思わないんですか?」
「・・・ははっ」

 架はつい笑いがこぼれた。少し前に自分の主に同じことを聞かれたからだ。が、どれだけ時間が経とうとも答えが変わることはない。

「思わないさ。」
「え?」
「アイツ・・・(マスター)を守るって決めたからな。」

 相変わらず背中を向けたままだが、そこにははっきりとした決意が込められていた。
 すると、シエスタは顔を赤らめながらそっとその背中に抱き着いた。

「シエスタ?」
「ふふっ、私、ミス・ヴァリエールが羨ましいです・・・。さて!服も乾いたみたいですし、これで失礼しますね!」

 ざばっと風呂から上がると、こちらを向きかけた架はまた体を固くしながら後ろ向いた。その反応を可愛く思いながらメイド服を着こんでいく。


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