第九十四話
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シリと指を指されたユウキが、敬礼を伴って復唱する。それを「よろしい」と深々と頷きながら、ユウキに指していた指を、ゆっくりとユウキ本人から、彼女が持つ日本刀《銀ノ月》に向けていく。
「……鞘、どうしたの?」
「鞘……? あっ!」
リズの質問に、ユウキは自らの行動を思い返す。あのカタナを借りて海に飛び、ルクスのピンチに駆けつけてカタナを抜き、そのまま鞘は海に落下。
「ご、ごめん……何だか今日は謝ってばかりだよ、ボク……」
「いやま、仕方ないわよ。鞘を固定するところがないわけだし」
何しろ水着に日本刀の鞘を差すところがあるわけもなく、ショウキが「気にしなくていい。また作ればいいだけだから」とかかっこつけつつ、内心ショックを受けそうな光景がありありと浮かぶ――かなりやけに具体的に――ものの、仕方ないのも事実だ。
「鞘ってこれ?」
「そうそう。そんな感じのってそれ!」
シウネーにエメリを渡していたノリが、黒く光る鋼鉄の鞘をリズに差し出した。まさしくそれは日本刀《銀ノ月》の鞘そのものであり、ノリはリズへとその鞘を渡すと、少し恥ずかしそうに目線を下にズラした。
「そのー。あたしたちの仲間が1人さ、ずっと泳ぎっぱなしって言ったと思うんだけど」
1人は水着が恥ずかしくて日陰から出て来ず、1人は適当に褒めるだけで特になし、1人は興味もなく海に直行。せっかく水着姿だってのに――と、確かにそんなことを言っていた。そしてノリの視線を追ってみれば、ルクスが乗り捨てたシールドにほうほうの体で乗っている、漂着物だらけのサラマンダーが横たわっていた。
「あのクラゲが来てもまだ海にいたみたいで、色々漂着物まみれであんな感じ。そん中に混じってたの、ソレ」
「へ、へぇ……」
色々ツッコミたいところは多々あるが、それは今はよしとすることにして。そろそろ水着コンテストの集計も終わり、優勝者が決まる結果発表の時間だ。
「何でもいいわもー疲れた。どうせ一位はルクスかユウキだし、結果発表見て早く打ち上げ行きましょ!」
「リズさん、まだ決まった訳じゃないんですから……ユウキさん?」
冗談めかして言ったリズの言葉に、どうしてかユウキたちの表情が固まった。これ以上深入りしてはいけない、とでも言うような、その悲しげな表情を無理やり笑顔にし、メンバーの中でもまとめ役のシウネーが口を開いた。
「ごめんなさい、リズさん。私たちは……」
――そのシウネーの言葉をユウキが遮ると、本当の笑顔でリズたちに応えた。
「……ううん! 終わったら打ち上げ、行こ!」
「ユウキにルクス、水着コンテスト一位おめでとう!」
――こうして彼女たちの水着コンテストは終わり。すっかり蚊帳の外だっ
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