第九十四話
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て何故折れないのか、などと多々疑問はあるがそれはともかく。傍目から見ても困り果てた顔をしたタルケンと目があった瞬間、彼の眼鏡をかけた顔に「その手があったか!」といった感情が浮かんだ。
「師匠!」
さっと目をそらしたものの時すでに遅く。タルケンが遂に日陰から浜辺に出てきたかと思えば、助けを求めるように焼きそば店にたどり着くと、こちらにそのクワのような刃物を押しつけてきた。
「直せま」
「無理だ」
焼きそばを作る台を挟んで向こうにいるタルケンの言葉が終わるより先に、口から勝手に否定の言葉が出る。《鑑定》もしてみなければ正確には分からないが、まあ多分無理だろう。少なくともこの浜辺で簡単に直せるものではない。
「そ、そうですか……ですよね……」
「……師匠? タルの?」
「違う。さっき知り合ったばかり」
しょんぼりとするタルケンをよそに、ユウキという少女の疑問の言葉に答える。さっきから否定してばかりだ――というこちらの心持ちはともかく、目の前のインプの少女は、不思議な視線でこちらを見上げていた。
「ふーん……あ、ボクの名前はユウキっていうんだ! よろしくね!」
「ああ、俺はショウキって――」
……いや。彼女の視線は自分に注がれているというよりは、彼女と自分の間にある一点に注がれていた。こちらとユウキの間にあるものといえば屋台。正確には焼きそばを作るための鉄板――
「そ、そうだタル! 折っちゃったのは悪かったけど、ボク急いでるんだ! 何か予備の剣とかないかな?」
視線が鉄板に注がれているユウキを見るこちらの視線に気づいたのか、少し顔を赤らめたユウキがうなだれているタルに聞く。海の味がする、とあの美味くない焼きそばを大絶賛していたテッチにタルケンといい、ユウキたちは何かに飢えているのだろうか。
「予備……うーん、ちょっとユウキが使えそうなのは……」
アイテムストレージをチェックしているタルの言葉から、折れ曲がったユウキの剣を見てみれば。確かに片手剣と一言で言っても、ユウキが使うソレは細剣と見紛うかというほどで、タルケンがカスタマイズしたものなのだろう。……今は見る影もないが。
「うーん、どうしよう……このまま行ったらシウネーに怒られるしなぁ……――?」
折れ曲がった片手剣を見ながらユウキが考え込んでいると、海の方で物音が発生した。海からは少し離れているこの店にも届くほど――悲鳴のようにも聞こえる騒音を伴って。
「悲鳴?」
タルケンの声とともにそちらを見ると、海に巨大な怪物が現れていた。クラゲをそのまま大きくしたかのような、幾多の強靭な触手を持ったその怪物は、海にいた非武装のプレイヤーを襲っていた。
「モンスターは出ないんじゃ…
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