暁 〜小説投稿サイト〜
猫又
4部分:第四章
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
ど、と言ったところで前足で力瘤を作った。
「そこでドカンと」
「じゃあ部長とお話してね」
「うん」
「ちぇっ」
 思いの外押しが弱くそれに肩透かしを食わされる。
「そこでやらないと」
「それで決めましょう」
「うん、そうさせてもらうよ」
「これはまたの機会だな」
 トラは屋根の上に寝転がって呟いた。右の前足で頭を支えて横に寝ている。
「じゃあ次は何処かな」
「あっちの校舎よ」
「うん、じゃあそっちにね」
「ええ」
 二人はそのまま向こうの校舎へと歩いていく。それで今回の話は終わった。少なくともトラの思うようにはいかないで終わってしまったのであった。
「やれやれ」
 トラは姿を消した。そして何食わぬ顔で家に帰って来た沙世と話をするのであった。
「ねえねえ聞いてよトラ」
「どうしたんだい、嬢ちゃん」
 トラはこの時リビングのソファーにあぐらをかいて新聞を読んでいた。読んでいるのはスポーツ欄でありそこには阪神の連勝のことが書かれていた。
「昨日来た転校生だけどね」
「ああ、そういやそんなの言ってたな」
 とどけて応える。
「で、それがどうしたんだい?」
「演劇部に入るって言ってるのよ」
 沙世は鞄を置いて制服のままトラの向かい側に座った。そして話をしている。
「演劇部にね」
「そうなのよ。うち丁度男の子少なかったし」
「それだけ?」
 トラはここで新聞から目を離して沙世に問うてきた。
「えっ!?」
「だからそれだけって。部に人が来て嬉しいだけなのかい?嬢ちゃん」
「えっと、それは」
(本当に嘘が下手だな、こりゃ)
 トラは沙世を見て内心思った。これで演劇部というのもどうかとさえ考えるがそれはあえて言うことはなかった。
「お友達が増えて嬉しいってところかな」
「えっ、ええそうなの」
 沙世は咄嗟にそう答えて誤魔化した。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ