九十七 里抜け
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
彼のようになる可能性も大きい。昔の我愛羅のように、ただ殺戮を楽しむ存在になるかもしれない。
それを、今の我愛羅は危惧したのだ。
里抜けを手助けしたところで、サスケが闇に染まる結果に終われば全てが水の泡だ。
なにより波風ナルが悲しむ。だからこそ我愛羅はサスケに念を押した。
これを伝える為にわざわざ終末の谷にまで出向いたと言っても過言では無かった。
「それをよく肝に銘じておけ、うちはサスケ」
声音と共に伝わった我愛羅の殺意を確かに背中越しに感じて、サスケはくっと口角を吊り上げた。地を蹴る。
滝音と、波風ナルの気配が共に遠ざかってゆく。否、自分自身が終末の谷から離れてゆくのを実感しながら、彼は呟いた。
「――――上等だ」
兄と同じスパイへの道を選んだ時に、もう心は決まっている。
万が一にも無いが、もしも大蛇丸のように闇に堕ちてしまった際、殺されても文句は言えない。
それだけの覚悟がサスケにはあった。
(……イタチの仇を討つまでは死ねないがな…)
確実に復讐への道程を辿りながらも、決して闇には染まらない。
たとえ世間では抜け忍とされても、裏切り者と蔑まされようとも、サスケには胸に秘めた野心があるのだ。
己の兄…うちはイタチを殺した――うずまきナルトへの復讐を果たす、野望。
それを果たす為に。
額当てを外す。木ノ葉の印が施されたソレを、サスケは名残惜しげに、しかしながら無造作に捨て去った。
木ノ葉を抜け、国境を越え、音隠れの里へ向かう。
額当てが無くとも、木ノ葉隠れの忍びとして。
陽が落ちると共に齎された情報に、綱手は顔を顰めた。
表向きは、里を抜けたうちはサスケを連れ戻す任務。
だがその実態は、サスケを見逃し、無事里を抜けさせる任務だ。
サスケに木ノ葉のスパイとしての隠密活動を遂行させる為に。
けれど、シカマル達の帰還と同時に綱手へ流れてきた知らせは、二つあった。
里抜けに関しての吉報と、凶報。
綱手は窓から里を一望する。
落陽に赤く染まる街並みでは、穏やかに過ごす人々が夕陽に促され、次々と自分の家へ帰ってゆくのが垣間見えた。皆が各々自分の帰る場所を、居場所を持っている。
そんな当たり前の光景を目にしながら、彼女は深い溜息をついた。同時に、両親がいない波風ナルを思い浮かべる。
「家族がいなくとも、此処を居場所だって思ってくれる奴もいるのにな……」
綱手が火影になろうか迷っていた時に、大げさな身振り手振りで木ノ葉を自分の居場所だと言ってくれたナル。
あの言葉にどれだけ救われただろうか。
綱手は己の故郷でもある木ノ葉の里をじっと見つめていたが、やがて
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ