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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第3章 黄昏のノクターン  2022/12
26話 奇蹟を携える者
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。その後の反撃を考えると迂闊には勧められない。
 ともなれば、ブレスを遅らせて且つ持ち堪えることが、時間稼ぎを申し出た俺に求められた仕事となる。無論、どうにかなるという見立てで行動しているから勝算は少なからずあると仮定してのことだが、どうなることやら。


「………後ろがガラ空きだ」


 後ろ足の間をすり抜けて、腹部の真下へ。ヘイトが他のプレイヤーに向いているとはいえ、懐を許す野生動物など想像出来ないが、これこそSAOがゲームである証左だ。低い姿勢で踏ん張るらしく、上から巨体が降りてくるような重圧があるものの、いやむしろ息を吸い込むにつれて腹が膨らんで実際に下がってきているのだが、これでこそ狙い甲斐があるというもの。腰を落とし、掌底を突き出した左腕を脇に据え、全身を絞るように構え、そして、放つ。


「ッッゼィイヤァァァ!!」


 獣が牙を剥くが如く、限界まで抑圧された力を青の光を纏った左の掌底に込めて頭上(水月)に打ち放つ。

――――体術スキル重攻撃技《裂衝(れっしょう)

 高威力かつ低確率で麻痺付与と優秀な性能に見えるが、溜めが大振り過ぎて実戦向きではなかった技である。ここで役に立つとは思いも寄らなかった。あたかも風船にめり込むように埋もれた腕を素早く引き抜き、脇から抜けて離れると、レクステリウムは通常のブレスとは異なる、黒煙と火花だけを破裂音と共に吐き出す攻撃性の無い動作をとる。上層にてブレスを繰り出すモンスターが見せた《ファンブル》のモーションに酷似したそれは、俺の目指していた結果を優に上回る結果だ。
 一瞬でも怯ませ、ヘイトを俺に向ければと考えていたのだが、ブレスの予備モーション中はこちらからのダメージ量やデバフ成功確率が上昇するのかも知れない。しかし、これにてブレスも無効化の手段が判明。惜しむらくは前述のデメリットと、スキルの冷却時間が長いことであろうか。完全に体術スキルの利点を殺いだものであるから笑い話にもならない。


 そして、再びレクステリウムを襲う転倒コンボ。ブレスを妨害してから十余分後、本来の目的とは違うのだが、中ボスクラス戦闘能力を誇った巨大火炎熊は撃破されることとなる。
 やはり数の力は侮りがたい。ましてや高度な連携を可能とするクーネ達がいてくれたからこそ何事もなく戦い抜けたのだろう。そして、クーネ達は大型モンスターの討伐後に《ドロップ品報告会》なるイベントを催すらしく、クーネ達の軍門に――――一時的とはいえ――――籍を置いた俺達も参加する運びとなった。要は単純にドロップ品の確認なのだが、それで一喜一憂し、挙句には《部屋の掃除》や《ニオを抱き枕にする権利》を賭けるなど、彼女達なりの楽しみ方だとか。

 ………ということで、良く分からないまま全員のリザルトウインドウが見せ
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