確率の惑うは誰が為
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一つ、占いを聞いてくれまいか」
顔も出さずに名乗った女の人の名前は、何処かで聞いたことがあった。
記憶を探って思い出したのは、凄腕の占い師が街に居るという噂話。その人の名前と一緒だった。
華琳様も知っていたようで、片目を細めて管輅と名乗った女の人を見つめた。
「へぇ、あなたが噂の管輅?」
「いかにも……希代の覇王、曹孟徳」
「そう、私を覇王と呼ぶの。覇王と知りながら占いを持ちかけるなんて、中々の度胸じゃない」
「そなたがその類を信じぬことは知っている……が、聞いておく程度なら損はない、乱世の奸雄よ」
息を呑んだ。
乱世の奸雄なんて、侮辱に等しい言葉をこんな真っ直ぐ華琳様に向けるとは思わなかったから。
そう呼ばれていることは知っている。あの袁家の終末が噂と広まっている今では、華琳様は他の街でそう呼ばれたりもしていると報告されている。
無礼は責めてもいい。面と向かって侮辱されたモノが王なら、頸を落とされても文句は言えない。王の立場は、軽くは無いのだから。
目を厳しく細めた華琳様は、僅かに吊り上げた口元で言の葉を流した。
「……面白いじゃない。乱世の奸雄とまで呼ぶの。それなら、続きを聞いてあげてもいい」
楽しそうに返す華琳様は何も気にせずに不敵に笑った。春蘭さんが居れば怒っているだろう呼び名を、気にも留めずに。
驚きに何も言えずに居ると、返答を受け取った管輅さんは、じっと動かないでいること幾瞬、静かに祝詞のように占いを紡いでいった。
「人の道を照らす日輪の覇王、人の和を信ずる王と相対せし。
相容れぬ想念は交わることなく刃を持たせ、儚き華が咲いて散りゆく。
止まること呑み込まぬ限り、安息が来るのは死でしか叶わず。
努々忘れることなかれ、平穏は敗北の先にもあると」
それは、占いというよりも未来の予知。
来るべき仁徳の君との戦の結末を諭しているかのように……まるで、華琳様が敗北するかと言っているかのように。
じくり、と胸が疼いた。湧いた感情は怒り。決めつけられるなんて、心外だ。
でも華琳様は……小さく鼻を鳴らした。
「ふふ……夢半ばで死んでしまうのならば私はその程度だということ。でも、私の平穏は私が決める。あなたの言う通りに、私が切り拓いてみせましょう。
雛里、この者に礼を」
「え……でも」
「いいのよ。私が征く道は私が切り拓くという約束の為なのだから」
揺るがない。怒りも持っていない。華琳様はやはり楽しそうに管輅さんを見るだけ。
しぶしぶ、私が代金を渡そうと懐を探り始めると……驚くことに管輅さんは月ちゃんにも同じように語りだした。
「宵闇に明かりを落とす銀月の王。夜天の中、二つの確率に苦悩せし。
一つは幸福の後の絶望。一つ
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