蛇髪少女は黒装束の手を取った
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が落ち着き始めた頃を見計らって、シュランは問う。
「…それで、何があったのですか?町内会は…」
「その町内会で今日、お前の話になった」
一瞬、呼吸が止まる。どくんと鼓動が大きく鳴って、続く言葉が詰まった。
街でシュランの話になるのは変な事ではない。この先あのバケモノをどうするか、なんて会議が時折繰り広げられているのだと彼からもよく聞く事で、今更驚くような事でもないのだけれど。
何だが、嫌な予感がした。今日の話し合いは何かが違ったのだと、そんな勘が働く。
「この間話したと思うんだが…最近街の付近で魔物の群れが確認されたと言っただろう?」
「はい、覚えています」
「今日はその群れをどうするかという話し合いだったんだが……」
と、そこから先が止まった。僅かに目が泳ぎ、頬を掻く。
これは言葉を選んでいる時のザイールの癖だ。そしてこの癖が落ち着く頃に言葉にするのは、慎重に選んだものでさえ十分にショックを与える声の羅列。言いにくそうにする彼を見るのは初めての事じゃない。街はどうですか、家族は元気にしていますか―――そう尋ねた時と同じ。シュランが受けるショックが少しでも小さくなるようにと選び抜かれた言葉で、ザイールは言う。
「その魔物を仕向けたのがお前じゃないかと……そう、町長が言い出した」
「そんな訳がないだろう!何を言っているんだ父さん!」
「現実を見ろザイール。お前はあのバケモノに誑かされているんだ」
ばん、とテーブルを叩いて立ち上がったザイールに向けられたのは、憐れむような目だった。可哀想にと囁くような声色が余計に苛立ちを強めていく。
そんな町長の一言を待っていたかのように、その場にいた町民達も口々に喚き出す。
「そうですよ坊っちゃん。あんな蛇娘に近づいて、どんな術をかけられたか解ったものじゃありません。一流の解除魔導士を今度連れてきますから」
「ちょっとザイール!あたしこの間言ったじゃない!アイツは貴方の同情が引きたいだけで、町長の息子が味方してくれてるって事実を作りたいだけなんだからって!」
「全く…復讐のつもりかよ、ふざけんじゃねえ。オレ達にこんなに迷惑かけといて、悪びれもせずへらへら生きていやがって!」
「どうせあの蛇でザイール君の事誑し込んだんでしょ?可哀想なザイール君、もうあんなバケモノに構う必要ないよ。あんなのは放っておけば勝手に野垂れ死んでくれるんだから」
あちこちから聞こえてくるのは、醜い事に気付かずに正義感を真似た何か。何も知らない無知故に、静かな守護に気づかない彼等のほうが哀れに思える。どうせ知った時には嘘だと喚くだけだろうが、と冷めた考えを吐き出す自分がどこかにいた。
声に聞こえていたそれが、徐々にただの雑音になっていく
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