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Element Magic Trinity
蛇髪少女は黒装束の手を取った
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っても彼女の味方であろうと決めた、半年前からの決定事項。
何気なく踏み出した右足の1歩は、そんな覚悟を纏うかのように力強かった。







それから数時間後。
ザイールは、隠し切れない焦りと怒りを浮かべて走っていた。








ドンドンドン!と荒れるような音が耳に飛び込んだ。
それがノックだと気づくのに数秒、次いで恐怖がじわじわと思考に滲み出る。本能的に身を抱いて、ローズピンクの髪が空中に広がり蛇と化す。
現在時刻は午後6時。町民だとすれば子供が来る時間ではない。だとすれば大人だと思い至って、それなら武器を振り回される可能性もあると身震いした。
細い吐息を吐く無数の蛇達をふるりと振るわせて、震える足でどうにか立ち上がって。

「シュラン、俺だ!ザイールだ!早く開けてくれ!」
「…ザイール、様……?」
「頼むから早く!じゃないとお前が危ないんだ!」

聞こえてきたのは、つい数時間前に聞いた彼の声だった。ただし普段の冷静さを大きく欠いて、慌てるような焦るような声で必死に自分の名を呼んで―――いや、叫んでいるといった方が正しいか。
殺気立っていた蛇達がしゅるりと何の変哲もない髪に戻るのを顔のすぐ傍で確認して、迷わず鍵に手をかける。外からは鍵が必要なこれは、内側からだと鍵かパスワード入力で開く。鍵はザイールが持っており、外に出る事のないシュランに鍵は不必要。その為2人で話し合って決めたパスワードを、間違いがないように慎重に押していく。
もしかしたら偽物かも、なんて考えはどこにもない。理由は解らないけれど恩人たる彼がここまで焦っている、それならシュランに出来るのは彼の望みを叶える事だけだ。

「ザイール様!どうなさったのですか!?」

扉を開けると同時に問いかける。突然開いた扉にやや驚いたように身を引いたのは紛れもなくザイールで、すぐにはっとしたように社の中に入り込んだ。かちゃりとロックがかかる音がして、息を切らした真っ黒装束は力尽きたようにその場に座り込む。

「ザイール様!?」
「だ…大丈夫だ。ただ…ここまでずっと走ってきた、から……」

どうにかこうにか息を整えようとはするものの、そう簡単にはいかない。苦しそうな彼の背中を擦りつつ顔を覗き込むと、汗が伝う顔がこちらを向いた。

「すまない…鍵を、忘れた。けど大丈夫だ、鍵が盗られる心配はない。厳重に、管理してある……」
「あまり御無理をなさらないでください。今水を」
「いや…構わない。すぐに正常化する、気にするな」

立ち上がりかけるのを手で制して、ゆっくりと息を整えにかかる。
そう言われてしまえば用意するのも失礼に思えて、右隣に体育座りで待機する事にした。右膝を立て左足を放るように座り背中を壁に凭れさせる彼の呼吸
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