蛇髪少女は黒装束の手を取った
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頃の行いの良さを知る神様が助けてくれたのだと、そんな根拠も何もない事を信じ込んで。やはりあのバケモノを遠ざけたのがよかったのだと。
だから、本当の事を知っているのは本人たる彼女とザイールだけ。噛みついたような傷跡、回る毒、真っ青な顔色のまま街から消えた賊達の些細な呟きを聞いた者は彼以外に誰もいないだろう。喜びに沸いた彼等に、”蛇”なんて単語は聞こえていたとは思えない。
「天罰、か」
本当にそんなものがあるのなら町民達に、なんて思ってしまうのは悪だろうか。
結局、彼等はシュランに助けられている。あれほどまでに虐げた少女の暗躍によって、大きな被害もなく今日まで生きている。バケモノと罵られる無数の蛇が、何をしても悪と見なされる彼女が、何故あんな奴等の為に命の危機を承知で戦わなければならないのか。
「……」
広げた右手に視線を落とす。その気になれば街1つくらい平気で呑み込む爆発さえ生み出す、先ほどローズピンクの髪を撫でたその手。
あの少女を少しでも危険から遠ざけられればと習得した魔法。けれどどうしても同じ場所には立てないままで、結局力になれないままずるずるとここまで来た。
そもそもの話、ザイールはこの力を町民の為に使う気なんてない。既にあんな街の事なんてどうでもいいとしか思っていないし、最近では帰る事にさえ不快感を覚える。だからといって街を離れれば彼女の味方がいなくなる為、どうにか我慢してはいるのだが。
逆に、シュランは持てる力の全てを他者の為に使う。そこに至るまでに何回傷つこうと構わないと言い切って、その相手が例え自らをバケモノと忌み嫌う者であっても。
だからこそ、力になれない。お互いがお互いの方を向いているようで、見ている先は全く別の方向で。助け合おうとしているのに、伸ばした手を取り合うまでがかなりの高難度。解り合えるようで解り合えない、そんな状況だった。
「…考え込んでる暇はないか」
ふっと息を吐いて、思考を振り切るように首を横に振る。ただでさえ最近悪化している親子関係を更に捻じれたものにする気はない。両親ともここ最近はぴりぴりと張り詰めたような空気の中でどうにかこうにか親子の形を保っているが、そこから更に悪化してしまえば何を言われるか解らない。特に町長たる父親はザイールにもこの立場を継がせる気満々で、ついでにいえば町民からのイメージアップの為にシュランを誰よりも強く罵り、虐げている。それが正しいと信じて疑わない上にそれを息子にも強制してくる、そんな父親を軽蔑するようになったのはいつ頃からだったか。それに逆らう力は自分にはないと思い込んでいる気弱な母親に苛立ちを感じ始めた時期も、気づけば覚えてなんていなかった。
「よし」
意気込むのは、両親や町民達の考えに飲み込まれて流されない為の覚悟の表し方。何があ
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