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Element Magic Trinity
蛇髪少女は黒装束の手を取った
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を、誰に対してでもなく吐き出した。

「どうして…あんな扱いをする奴等に気を配れるんだ……?」

それは出会った頃―――半年ほど前からずっと思っている事だった。
ザイールにとって、町長である父親を含めて町民達はある種の敵だ。身を挺して街を守ったシュランを虐げて、必死に助けを求める声を平然と踏み潰して、さも自分達が正しいかのようにのうのうと暮らして。そんな姿を見る度に爆破衝動に駆られて、寸前で彼女を思い出して止まる。
勇気ある行動を讃えろとはいわない。英雄として敬えなんて思わない。ただ、ごくごく普通の有り触れた生活を送らせてあげてほしいだけで、そんな簡単な事なのに彼等の行動がどんどん難しいものに変えていく。


――――私の事よりも、町民の皆様の事を大事にしてください。


そう、言われた時。
思わず反応が遅れた。驚きを顔に出しかけて、それをどうにか欺いた。どうしてと湧き上がる疑問に無理矢理蓋をして、飛び出しそうな問いかけを呑み込んで。
彼女は、自らがバケモノだという事実を受け入れている。故に誰よりも身分が低く、相手を敬うのは当然なのだと。町長の息子たる自分は将来街を背負う立場なのだから、町民を第一に考えるのは当たり前の事なのだと。
けれど、ザイールから言わせればシュランはバケモノなんかではない。確かに蛇髪は何度見ても驚く光景だが、だからといって平穏な暮らしを壊していい理由になりはしない。あれほどまでに冷酷な仕打ちを平然とやってのける町民大勢とシュランのどちらかを選べと言われたら、迷わず彼女を選ぶだろう。それは別に憐みから来る思いではない。可哀想だと思わない訳じゃないけれど、それよりも周囲に対する怒りの方が強くある。この環境から引き離せるなら、街ごと爆破する事になったとしても躊躇いはしない自信があった。

「…っ」

唇を噛む。切りそびれた爪が食い込んで痛いのも構わずに拳を握りしめる。
ザイールは知っていた。彼女の振り撒く優しさは、決して口だけのものじゃない事を。その言葉を証明するような、自らの犠牲を厭わない行動を。



例えばある時、街の近くに巨大な魔物が巣を作りかけた事があった。
その話が彼の耳に入り、何気なく彼女に話したある日の、何の変哲もない次の日の朝。

―――その魔物は巨大な骸と化していた。
体のあちこちを噛み千切られて、全身を毒が回って。




例えばある時、街の一角に賊のアジトが出来てしまった事があった。
何を言っても武器をちらつかせて脅すのだとぼやいたその日、彼女は「大丈夫ですよ」と笑って。

―――「その様な方々には、きっと天罰が下るでしょうから」。
翌日、全身に噛まれたような傷跡のある賊達が、顔を真っ青にして街を出て行った。



町民達は喜んでいた。日
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