蛇髪少女は黒装束の手を取った
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そのような真似をなさるのですか!?」
彼女にしては珍しく声を荒げ、感情を剥き出しにしている。だがそれを珍しいなあと眺める余裕はなく、ただ吐き出される怒りを前に呆然としていた。
「聞いていらっしゃいますか、ザイール様!私っ、身分の違いを理解した上で申し上げますけれど、無礼を承知での御言葉ですが、私のせいで貴方が辛い思いをなさるのがどうしても嫌なのです!お願いですから御身を大事になさってください、貴方が大事にすべきなのは私ではなく貴方自身なのですよ!?」
ずいっと前に乗り出す。思わず後ろに引いたザイールとの距離は然程変わらないはずだが、先ほどまではなかった甘い香りがそっと鼻を擽って、1度は冷静になった思考を一瞬で掻き乱した。香水なんてものはないからシャンプーの匂いか何かだろうか、なんて考えがぼんやりと滲む。
「というか皆様は御無事なのですか!?ザイール様の事ですから、何だかんだ仰いながらも手加減はしていらっしゃると思いますけれど!」
「い、一応は…というよりは圧縮した空気を破裂させただけだから、単なる目晦ましの意味合いでしかないんだが」
「よかったです安心致しました!それでは後は」
と、そこで彼女の勢いが止まった。ふっと普段の冷静さが戻ってきたのか、こちらに乗り出した体勢のまま、握り拳2つ分くらいの距離しかない位置にあるザイールの顔をじっと見つめている。
そのまま、秒針の音が聞こえるほどの静寂が数十秒。
「――――!?」
ぶわわ、とシュランの頬が一気に赤く染まる。ずさっと音がしそうな勢いで後ろに下がり、ぺたんと座り込んだ姿勢のまま両頬にそれぞれ手を添えて目を伏せた。僅かに開いた唇からは「えっと」だの「その、ですね」だの小さな声が途切れ途切れに零れては先に続かない。
一方のザイールはといえば、傍から見れば尻餅でもついたかのような体勢でつり気味の黒目を見開いていた。瞠る目を数回瞬きさせて、それからすぐに表情が驚きから困惑気味なそれへと変わる。
「シュラン?」
「!も、申し訳ございませんザイール様。私のような者があんな暴言を……!」
「いや…別に暴言と言うほどのものでもなかったぞ?よく考えればお前が怒るのも尤もな訳で……」
「そ、それにその…近づきすぎ、ましたし」
うぐ、とフォローの言葉が詰まる。
確かにそれは気になった。けれど距離が近いと言い出せる雰囲気でもなくて、とりあえず様子を見ようとしていた時に彼女が冷静さを取り戻して。勢いよく飛び退かれた事に若干ショックを受けたのは余談として、詰まって消えかけたフォローを何とか掴み直して声に乗せる。
「も…問題ない。驚きはしたが嫌ではないし、さっきも言ったがお前が怒りたくなる気持ちも解る。町民達を気遣えと言われたのに、俺にはそれが出来なかった」
「
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