蛇髪少女は黒装束の手を取った
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要じゃない。ザイールは既にその意思を崩さずに持っているし、シュランは追い出されたも同然なのだから。
だから大事なのはその後だ。街を出てからの話。一緒に暮らさないかと、そんな事を。彼氏が彼女に言うような、恋人同士でもない2人の間で飛び交う言葉でもないはずの、そんな問いかけ染みたそれ。
「いや…だから、俺とどこか別の場所で、その、暮らさないかと……」
「…えっと?」
「な、何度も言わせるな…!」
よく見れば彼の頬は赤く染まり、右手で顔の下半分を隠している。頬を隠しきれてはいないのだが、それを指摘する余裕はない。
「ザ、ザイール様。あの、それって」
「…何だ」
「いえその、そういった事は求婚される時の台詞かと…」
「!?」
どうにか言葉にしたそれに、ザイールはぎょっと目を見開いた。顔の下半分を覆っていた手が、驚いた拍子に落ちて床につく。
しばらくはくりと口を開いては言葉に迷って閉じるのを繰り返し、赤い頬を更に染める。忙しなく下げた目線をあちこちに走らせながら、1度下げた右手がくしゃりと黒髪を掴んだ。
「そ…そういうつもりじゃないんだ。ただお前を残して街を出る事は出来ないからどうにかならないかと考えた結果で、ああでも無理強いはしないしそれと求婚の意思はないから安心してくれ別にお前を嫌っているという訳ではないからな。あとそれと」
「お、落ち着いてくださいませザイール様!」
それからきっかり10分。
頬に集中した熱をどうにか冷まし、休みなく並べられた釈明が尽きた頃。
「…落ち着きましたか?」
「ああ…すまない。それで、さっきの続きだが」
お互いに普段の冷静さを取り戻し、“同棲云々の前に考えなければいけない事”を2人して今更ながらに思い出していた。どこまで話が進んだかを思い出して、ザイールは続ける。
「あの場にいた全員を敵に回して、とりあえずお前にこの話し合いの事を伝えなければと俺は家を出ようとした」
「出ようとした、ですか?ですがザイール様は」
「ああ、最終的に俺は家を飛び出してきた訳だが…その際に町長からこう言われたんだ」
女が泣いていた。だがそんなの知った事ではない、勝手に泣いていればいい。
男が信じられないと言いたげに驚いた表情を向けた。それなら信じなければいい。
昔から家にいた家庭教師が嘆いた。嘆かれるような事をしているつもりはない。
旧友が怒りから何かを怒鳴ろうとしていた。何を怒鳴ってももう届きやしないのに。
「ザイール…何を、言って」
「悪いがもうお前達との会話に付き合う気はない。お前達と同等になるくらいなら俺はアイツを選ぶ……いや、違うな。これから先何があっても、俺はアイツの味方であり続ける」
「けど、あのバケモノのせ
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