蛇髪少女は黒装束の手を取った
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いの」
「ですが…」
「本当に気にしなくていいんだよ?私達、もう仲間じゃない」
屈託のない笑顔でそう言えば、少し驚いたような表情で見つめ返される。
何か驚かれるような事でも言っただろうか。意外な反応にきょとんとしていると、ふっと彼女が微笑んだ。それがかつて向けられた嘲笑ではなく嬉しさから零れたものだというのは一目で解る。滅多に向けられない微笑みのまま、口を開いた。
「……そこまで言っていただいて、その御厚意を無下になど出来ませんね」
「いや、御厚意なんて大層なものじゃ…」
「そんな事はございません。……お恥ずかしい話ですが、同年代の方と親しくさせていただく事が今までなかったものですから、尚更」
その言葉に寂しさに似た何かを感じた気がして、言葉に詰まる。
普段傍にいるガジルは年齢不詳だが、外見だけで判断すると多分いくつかは上だろう。かつて同じギルドにいたジュビアは同い年のはずだが、この2人が一緒にいるところはあまり見かけない。時折何やら話し込んでいるのはこちらも同い年のクロスだが、友人同士の会話にしては周囲の空気が張りつめている気もする。
あまり人付き合いが得意そうでないシュランの事だから、幽鬼の支配者にいた頃もガジルくらいとしか関わって来なかったのだろうか。だとしても、ギルドに入る前は?ガジルと出会う前、故郷にいた頃に友人の1人くらいはいるのでは―――。
そんな考えが顔に出ていたのか、「勘違いなさらないでくださいね」とシュランは言う。
「私の言い方にも問題がありましたが…私にも、友人と呼べる関係の相手はいました。けれど今現在友人がいるのかと問われますと、否としかお答え出来ません」
「…どうして?」
問いかけると、彼女の目が僅かに曇った。ほんの一瞬揺れた黒い目が、静かに伏せられる。
聞いてはいけない事だったのだろうか。ふとそう思ったこちらが質問を撤回する前に、彼女は伏せていた目を上げた。
それと同時に、顔のすぐ横にある髪の1本が波打つ。赤い光が2つ灯り、毛先が2つに割れ、小さいが鋭い牙が覗く。
「それ、って……」
それが何かを認識するよりも早く、威嚇するような吐息を吐いた蛇は何の変哲もない1本の髪の毛に戻っていった。それから、ゆっくりと答えが追い付いてくる。
―――蛇髪と彼女が呼ぶそれは、魔法ではないのだと聞いた。気づいたら身についていた体質で、髪の1本1本を蛇へと変える力なのだと。本体であるシュランが死なない限りは何度斬られても再生を繰り返す、不死身の蛇の群れ。
「先ほどの質問にお答えさせていただきますと……私が、バケモノだからです」
レビィが目を見開いた。
寂しげに笑って、かつて故郷で“呪われし蛇髪姫”なんて大仰な名で呼ばれていた少女は語り始める。
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