10. 大海原でつかまえて
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ォオオオオオオ!!!」
疲労の色が濃かった姉ちゃんの目に輝きが戻ったのが分かった。姉ちゃんは立ち上がり、テレタビーズの試合の時にホームランを量産していたキッとした表情で、僕に向かって両手を広げた。
「お姉ちゃんもシュウくんを捕まえる!! シュウくんをどこにも行かせない!!」
「気合ィイ! 入れてェエ!! 捕まえろォォオオオ!!!」
妖精さんたちが僕とカ号の接続を切断した。僕の身体が重力に従って猛スピードで落下する。
「ねえちゃぁああああアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
猛スピードで落下するぼくは姉ちゃんにキャッチされ、その瞬間姉ちゃんの声が、耳ではなく、僕の胸に響いた。
――シュウくんが好きです
僕も姉ちゃんが好きです。
受け止めきれなかった落下の勢いで、姉ちゃんと僕は抱きあったまま水中に沈んだ。沈んだところで待ち構えていたのはゴーヤ。
「いくでち!!」
ゴーヤが僕と姉ちゃんの襟を掴み、猛スピードで数十メートル潜った後、てれたびーずに向かって泳ぎ始める。ぼくはありったけの力を込めて姉ちゃんを抱きしめた。自分でもびっくりするぐらいの猛烈な力を込めて姉ちゃんを抱きしめた。
そして、それは姉ちゃんも同じだった。いつかの優しい抱擁とは違い、姉ちゃんもものすごい力で僕を抱きしめた。『絶対に離さない』という決意を感じるほどに、身体が姉ちゃんの力できつくつきく締め付けられる。水中のため呼吸も出来ず苦しい。水圧のせいもあり、少しずつ意識が遠のいていく。
それでもよかった。呼吸が出来なくてもいい。痛くてもいい。苦しくても構わない。姉ちゃんがそばにいて、触れられる事が……抱きしめられる事が、何よりも嬉しかった。
抱きしめる姉ちゃんの全身から、姉ちゃんの気持ちが感じ取れた。姉ちゃんの手や顔、体全体から、姉ちゃんの気持ちが聞こえた。
――あなたが好きです。あなたが大好きです。
僕もあなたが好きです。あなたが大好きです。逆ギレするほど大好きです。あなたのそのお日様のような笑顔が、世界で一番、誰よりも大好きです。
だから僕は、例えあなたと離れることになるとしても、あなたとケッコンします。
僕は、呼吸が出来ず遠のいていく意識の中で最後の力を振り絞り、最愛の人の左手を取って、その薬指に指輪を通した。
――つかまえた
その直後姉ちゃんの身体が眩しく光り輝き、ぼくはその温かく心地いい光に包まれながら、意識を失った。
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