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猫又
2部分:第二章
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「宜しくお願いされますです」
「こら、文法が変だぞ」
「す、すいません」
 そんなこんなでホームルームが終わり転校生の若松澄也は沙世の横に来た。その席に座る時にそっと沙世に挨拶をしてきたのであった。
「宜しくね、片桐さんだったっけ」
「え、ええ」
 顔は真っ赤なままだった。その顔で応える。
「宜しく」
「何かあったらお願いね。来たばかりだから」
「こちらこそ。宜しくね」
「うん」
 その日はずっと顔が赤いままであった。沙世は何と言っていいかわからずずっと赤い顔のまま学校で過ごした。学校が終わって家に帰ってからも大変であった。
「ふうん、転校生か」
「そうなのよ」
 やっと落ち着いてきてトラに話をする。
「すっごいハンサムで。格好いいのよ」
「そんなに?」
「はじめて見たわよ」
 また顔が赤くなった。
「あんな子。素敵なんだから」
「成程ねえ」
「何か声もかけられないのよね。色々教えてやってくれって先生に言われてるのに」
「じゃあいいじゃないか」
 トラはそれを聞いて言う。
「教えてあげれば。先生からのお墨付きなんだろう?」
「それはそうだけど」
 だが沙世の顔は晴れない。
「けれど・・・・・・ねえ」
 塞ぎ込んだ顔を見せてきた。
「そういうわけにはいかないのよ」
(ははあん)
 トラはそんな沙世の様子を見てすぐに何かを見抜いた。
(嬢ちゃんも遂にか)
 心の中で笑みを浮かべる。それから何気ない様子で言った。
「先生の言いつけはまもらないとな」
「わかってるわよ、それは」
 沙世は答える。
「けれどね、何か」
「じゃあいいことを教えてやるよ」
「いいことって?」
「話す前にな、手の平に人って文字を書くんだ」
 トラは沙世にそう教える。
「そしてそれを飲み込む動作をするんだ。そうすればいいんだよ」
「どうなるの?」
「人と話せるようになるんだ。その転校生とね」
「それっておまじない?」
「いや、魔法さ」
 トラはここであえて嘘を言った。
「猫又の妖術って言うのかな。そんなところさ」
「魔法と妖術じゃかなり違うんじゃ?」
「原理は同じものさ」
 これはある程度は本当であった。どちらにしろ普通の人間には扱えないものだ。

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