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でも、砦内を逃げ回るという肉体酷使が待っているのだから少しでも多く食べておきたい。
「はいよ」
「どもー!」
おばちゃんから、普段より割り増しのご飯を受け取り、その見た目でわかるボリュームの差に嬉しくなる。
とりあえず周りに人がいない長テーブルへと持っていく事にした。
「〜♪」
少し多めのご飯を前にして、一人寂しく〜…なんて思わない。
むしろここ数日、例の三人組に付き纏われてヒィヒィ言わされているのだ。
誰にも邪魔されず、ゆっくりと静かに味わえるのならぼっちでも構わなかった。
「それじゃあ…早速」
手始めに目についた所からご飯を食べようとしたーーーその瞬間。
「緊急の報告!」
「あぐんぅ?」
突然響いた張りのある声にビックリして、味わって食べようとしていたご飯をろくに味わいもせずに喉の奥へと飲み込んでしまった。
一体何事だろうか。
ここ数日は自分の身を振り回す陰湿な苛め以外は、平穏穏やかな毎日を過ごしていた…はずだった。
この砦で初めて聞く“緊急”。
それがなんでこんな時に、というタイミングでと思うが、食堂内に緊張が走る。
「本日未明、デトワーズ皇国姫陛下エルザ・ミヒャエラ・フォン・デトワーズが視察に寄られる予定である、と早馬によって伝達された!」
ざわっ…!
人が少ない食堂にざわめきが走った。
それだけ動揺を誘うほどに意外な来訪予告なのだ。
ここは国境近くのいくつもの防衛拠点の一つ。
その中でも重要性が低く、砦の大半が木材で出来ていて、傭兵を詰めているような場所だ。
いうなれば場末の僻地…そんな所になぜお姫様が…国のトップさんが視察に来る理由があるのだろうか。
「―――」
なぜだろうか。
どうしてだろうか。
僕は猛烈に厭な予感と共に冷や汗が流れ始めた。
次いで、ご飯の素材の味すらわからなくなった。
何か、記憶の隅っこに押し込んでいた存在が自己主張を始める。
うわぁ……。
記憶を振り返れば―――拳を振りかぶった“少女”の姿が途端に蘇ってしまった。
「(思い出した…忘れかけていたのに……あの姫様……エルザ姫の事を思い出しちゃった)」
脳裏に突き刺さるあの強烈な拳
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