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暴れん坊な姫様と傭兵(肉盾)
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 食堂内には数人しか残っておらず、それも正規兵っぽいので、安全安心で食べるのなら今の内だ。

 ぐぅ〜…。

「ああ、お腹空いた」

 ちょうど腹の虫も鳴って自己主張している。
 早速自分は、(ふところ)に入っている財布の(ドゥエ)を確かめる…うん、ちゃんとある。

 いつもの金額を手に握り、調理のおばちゃんの所へと向かった。

「おばちゃ〜ん! ご飯一人前ね!」
「あいよ」

 カウンター越しに厨房(ちゅうぼう)にいる初老(しょろう)でたくましいおばちゃんに、先払いで食事の代金を手渡した。
 鉄貨四枚、しめて40ドゥエだ。

 およそ30〜50ドゥエが一般的な食事一食分である事を考えれば、40ドゥエは並、しかしこの砦のはなかなか質がいい。
 そして今の僕は払いがいい。

 これは僕の経験上の話ーーー。

 傭兵(ようへい)の稼ぎは、大体悪いものである。

 傭兵(ようへい)とは雑兵(ぞうひょう)徴兵(ちょうへい)とは違って自ら志願(しがん)して戦に参加する者…ゆえに傭兵は稼ぎのいい所を探して戦場を彷徨(さまよ)う。
 しかし損得(そんとく)を考えると、どこの戦場でも雇う側は報酬(ほうしゅう)の下限は低迷(ていめい)させてくる。
 普通の十把一絡(じっぱひとから)げの傭兵(ようへい)の基本給が30ドゥエ程度なのだ。
 勿論(もちろん)日給。 敵兵を倒せばその分稼ぎは増えるけど、“生きて”稼げる傭兵(ようへい)は多くない。

 でもこのデトワーズは違った。

 驚く事に、この砦での傭兵(ようへい)の基本給は一日150ドゥエなのだ。
 三食分相当の日給は一般的な職と比べれば高額というわけではないが、傭兵(ようへい)に対しての払いにしてはかなり良い方だ。
 しかも戦闘なしで前線維持(ぜんせんいじ)するだけで全員がこれなのだ。 倉庫整理の僕も含めて。

「毎日美味しそうに食べに来るね。 それほど美味いわけでもないのに」

 40ドゥエを受け取ったおばちゃんは感心したようにそう言った。

 ここは国境防衛(こっきょうぼうえい)の砦の一つであるから、数日に一回程度の物資(ぶっし)任せだと新鮮な食材は使えない。
 だからある程度の量はあっても、日持ちのする食材によるご飯しか出てこないのだ。

「三食ご飯が食べられる生活なんて久しぶりだからね。 贅沢なんて言わないよ〜」
「……傭兵(ようへい)は体が資本(しほん)なんだからね、ちゃんと食わないといかんよ。 おまけで量増やしてあげるよ」
「わーい! ありがとう、おばちゃん!」

 (あわ)れみがこもった(ほどこ)しだけど、おまけをして貰えて表情に出して喜ぶ。
 倉庫整理以外
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