1部分:第一章
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見たいっていつも言ってるのに」
「うっ」
沙世に突っ込まれて言葉を詰まらせる。
「それに後何百年も生きるんでしょ、猫又って」
「ま、まあそうだけどよ」
言われてしまってはどうしようもない。
「だからそのうち見られるわよ。安心してよ」
「いや、安心は」
とても出来なかった。どうしても沙世のそっちへの疎さが気になるのだ。だがそれを言っても何にもならないのも自分で嫌になる程わかってもいた。
(まあいいか)
トラは心の中で呟いた。煙草を前足に持ちながら。
(いざとなりゃこの俺が何とかしてやるか)
そんなことを考えていた。だが沙世は相変わらずで何の変化もない。トラは阪神の勝ち負けに一喜一憂しながらそんな彼女を見守っていた。
そうした日が続いていた。ある朝。教室でぼんやりとホームルームを聞いていた沙世に突然異変が舞い降りてきた。
「転校生だぞ」
担任の桐生先生がいきなり言い出した。
「えっ!?」
「転校生って!?先生」
「転校生って言ったら転校生だ」
沙世のクラスの担任の桐生先生はかなり強引な先生として知られている。野球部の顧問で自分で応援歌を作り卒業写真で部員全員でポーズを決めたり何でも気合で済ませようとする。そうしたいかした先生であり生徒からの評判は実にいい。また違った意味で。
「わかったな」
「何でいきなり言うんですか!?」
生徒達の意見は続く。
「面白いだろ」
「面白いって」
「いきなり言った方がな。それでその転校生だ」
「またあの先生は」
沙世はそんな先生を見ていささか呆れ顔であった。いつものこととはいえこうした悪戯に呆れさせられたり困ったりしているのもまた事実だからだ。
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