第十六話「その憧れは、歪みとなる」後編
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「お、おいおいおい!? ありゃあ何だよ!?」
観戦席から見る太智達は目を丸くしていた。
「あ、あれはいったい……!?」
清二が呟くと、それにヴォルフは答えた。
「……VTシステムだよ?」
「VTシステム!?」
「ヴァルキリー・トレース・システムの略で、過去に開催されたモンド・グロッソの優勝者の戦闘データを再現した戦闘システムだ。しかし、あれは条約的に企業の間では開発を禁止されているはず……!」
「じゃ、じゃあ! ありゃあ反則じゃねぇか!? だったら、ラウラの反則負けってことでいいじゃんかよ!?」
と、太智。しかし、そう甘くはなかった。
「そんなっ……!?」
突然の敵の変異に弥生はギュッと手を握りしめた。
「狼さん!?」
箒との戦いから、俺の元へ駆け寄る一夏。
「一夏! 油断するな……今の奴は、只者じゃない!!」
「ええ、わかってます……あの殺気は異常だ!」
『異常事態発生! 観戦席に居る生徒たちは速やかに非難し、教員はISに搭乗して速やかにアリーナへ急行してください!』
山田先生の放送がアリーナ中に響いた。
『二人とも、速やかにその場から退避するんだ。狼、君はよくやった……あとは他の教員に任せて早くそこから……』
「……ごめん、ヴォルフさん。俺、やっぱり最後まで戦うよ?」
『狼……!?』
「……俺は、大切な『誰か』のために最後まで戦い抜きたい。もう目の前の恐怖から逃げないんだ。この剣にかけて大切な誰かを守り通したい!」
「狼君……」
その無線を聞く彼女は、キュンと胸を締め付けられ、そしてそれは再び涙となって流れた。
「……」
――この気持ちが、儚い片思いでもいい。ただ、俺は純粋に彼女のことが……「好き」だから。
彼女自身はそうでなくても、俺は弥生を大切な「誰か」として守りたいんだ!
『わかった……君がそこまで意思の固い戦士だとはお手上げだ。武運を祈る!』
「ありがとうございます……!」
そして、俺は一夏の前に出た。
「一夏、助太刀は無用だ……俺にやらせてくれ?」
「ああ、わかってるよ? 狼さん」
と、一夏は静かに箒を連れてここから立ち去った。
「行くぜ……ラウラ!」
相手が反則を用いるなら、こちらとて容赦はしない。こんなとき、「絶対神速」が使えたら……
「……?」
しかし、何故だろう? 心のどこかから零が俺に答えたように響いてくる。そして、俺はフッと微笑んだ。
「そうか……ようやく、俺に使わせてくれるんだな?」
と、俺は零を両腕に構える。そして、目力を強め、黒い騎士を見た。
「もう……俺を試そうとはしないのか?」
独り言のようにつぶやきながら、俺は前方で同じように構える黒い騎士に勢いづけて突っ込んでいく。それを迎え撃つかのように黒い騎士は剣を振り下ろそうと
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