第十六話「その憧れは、歪みとなる」後編
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「だから、甘いと言っている……」
そして、リアアーマーから放たれたワイヤーブレードの乱れ打ちにあいながらアリーナの壁へ叩き付けられた。
「ぐはぁ……!」
「狼君ッ!?」
大きなダメージを追った狼を見て、弥生はすぐに涙ぐみそうになった。そして、その痛みに苦しみながら蹲る狼を見た時、彼女は途端に泣いてしまう。
――やめて! これ以上、狼君に酷いことしないで!?
それは、ラウラへ訴えるかのような心の叫びだが、それでも彼女の見守る中で狼はよろよろと立ち上がった。
「へへッ……なにくそ!」
昨日の傷口が開いたのか、額と端から血が垂れた。トラウマが蘇ろうとするも、俺はそれを必死に振り払い、額と口の端から垂れる血を思いっきり拭い払った。
――さっきの現象はいったい!?
『狼! あれはAICだ!!』
無線から、ヴォルフの声が聞こえた。
「え、AIC……?」
『日本語で表記すれば慣性停止結界と呼ばれる、相手の動きを一時的に停止させる技だ。こんな反則技を使うとは……卑怯者め!』
「ど、どうすれば……!?」
『一対一ではラチがあかん! 一旦、一夏に応援を頼むんだ』
しかし、一夏は狼の邪魔にならないようあえて手加減をしながら箒と対戦を続けている。
「ダメだ! 一夏は箒と……」
『しかし、他に方法は……』
「……とにかく、やってみる!」
俺は、再び我武者羅にラウラへ勢いよく突っ込んだ。しかし、やはりギリギリのところでそのAICが発動して俺が動きを止められてしまう。そして、手のプラズマ手甲を直に食らってしまう。
「まずい! シールドが……」
――シールドが50を切った!
動きを止められてもジタバタ足掻こうとするが、やはり身動きは取れない。くそ! どうすれば……
「ッ……!?」
そのとき、俺はふとラウラの表情を見た。先ほどと比べて少し息切れをしているかのように思える。
――まさか、あの能力を使うたびに、疲れが生じるのか?
対戦を始める前よりも息を荒げているように見える。そうか……遠距離はレールカノンを、そして中距離ならワイヤーブレードで追い回し、そして至近距離ならAICで動きを止めて手の甲より展開されるプラズマ手甲で斬り払う。おそらく、レールカノンのような大出力の武装は至近距離だと自分も巻き添えになるから使えないのだろう。こうなるんなら、最初っから奴のデーターファイルをじっくり見ておくべきだったぜ! だが、これで奴の大体の攻撃スタイルが割りだせた。後は、それを元にどうやって攻略を編みだせばいいかだ。時間も限られている。早いうちに何とかしないと!
――AICの神経を鈍らせれば……!!
再び、俺は地上を数百キロのスピードで駆け回った。しかし、下手にラウラへ突っ込まずにひたすら彼女の周辺をグルグルと走り回る。
「フン! 小賢し
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