第十六話「その憧れは、歪みとなる」後編
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笑んで問う彼女に、俺は少し表情を曇らせた。今朝から嫌だと否定し続けてきたが。蒼真との話で次第に複雑な心境になっている。
「あ! 別にお答えしなくてもいいんですよ? ただ……少し気になって」
「弥生ちゃんは、怖い……?」
「えっ?」
「君は……怖くないの? その首輪のことで」
聞いてはいけないかもしれないが、俺は思い切って彼女に聞いた。
「……」
弥生は、首元に取り付けられた首輪にそっと手を添えると、俺に答えた。
「魁人さんが早く解除に成功するのを祈ります……」
「もし……明日になってもダメだったら?」
「そのときは、狼君を信じます!」
と、彼女は笑顔でそう答える。
「何で……俺を?」
「……初めて出会ったとき、狼君は命も省みず私のもとへ助けに戻ってきてくれました。セシリアさんとの戦いでも貴方は最後まで諦めずに戦い、そして見事勝利を得た。だから……今回も、狼君を信じたいんです。誰よりも一番……」
――弥生……
俺は、誤解していたかのような目で弥生を見つめ直した。
「だから、明日はどうなるかは決まっています。必ず、狼君が何とかして……いえ、私を助けてくれるって……狼君は絶対、恐怖に打ち勝ってラウラさんに勝ちます!」
「で、でも……今の俺は……」
今の俺は、恐怖と痛みを恐れて明日の試合の出場をためらっている。
「今は今! 明日は明日です!」
と、両手を握りしめて俺にガッツポーズする弥生。
「今こうして考えていても、その日にならないと何も始まりません。明日になってみないと何もわからないんですから」
そんな彼女に、俺はなんとなく慰められ、そして元気づけられたかのように思えた。
「ああ、そうだな……」
わずかにも、俺は微笑んだ。
「あ! でも、別に私の言ったことは絶対気にしないでくださいね? あくまでも、すこし言わせてもらっただけですから、明日はひょっとすると罠だっていうこともあるし、明日の状態で考えてくださいね?」
それから弥生は、俺のことを心配して今日も部屋で食事を作り、一緒に食べた。いつものように食事を終え、そして食器を片づけるのも手伝った。
その後は、消灯時間になりすぐさまベッドに潜った。しかし、俺だけは上手く寝付けずにおり、やっと寝れたと思ったら、まだ日も浅い午前3時に目が覚める。
「……」
コッソリと部屋を抜け出した俺は。零を展開して気付かれぬようベランダから抜け出し、夜空を飛んでアリーナのフィールドへと降り立った。
「……!」
そして、零を引き抜くとひたすら一人稽古を続ける。素早く周辺を走り回り、蒼真や一夏との稽古を思いだしながら刀を振り、そして目の前にシュヴァルツェア・レーゲンがいると想定しながら動きと攻略を考案した。先に攻撃されないよう対策のための動作を取らなくてはならない。
何度も考え、
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