第十六話「その憧れは、歪みとなる」後編
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「ま、そろそろ魁人も首輪の解除に向けてあと一歩とか言ってたな? あ、俺がさっき言ったことは別にプレッシャーでも説教とかでもないから、あとはテメェ次第だ。どういう答えを出そうが、俺はただ黙って見届けるだけさ? 何度も言うが、誰のためでもない『自分のため』に決断しろ?」
と、蒼真は立ち上がると、俺に背を向けて部屋を後にする。だが……ひとつ言い忘れたと、彼は俺に振り向かずにこう言い残した。
「弥生……お前が倒れている間、必死にお前を看病したんだとさ? 包帯かえたり、汗ふいたり、新しい寝巻を着せたりして……あ、パンツも履き替えたりとか?」
「え!?」
「ハハハ! パンツは冗談だよ? でも……お前が意識不明の間に弥生は今にも泣きそうな顔をして、お前のそばにずっと居たんだとさ?」
「……」
「……もし、弥生が『大切な誰か』に当てはまるのなら、明日の試合に出て、とことん本気で精一杯やってこい? お前は……決して『無能』でも、『無力』でもない。かつての俺のように何もできないまま大切な誰かを目の前で失うようなことはないんだから……」
「蒼真さん……」
「じゃ! 俺もこれ以上は長いしたくないし? っていうか忍び込んできた身だからテレポートですぐ帰るわ? 何度も言うけど、明日に関してはお前自身が決めるんだ。俺は気にしないぜ……じゃ!」
と、蒼真は目の前で光となり消えていった。
「ただいま? 狼君」
しばらくして、弥生は帰ってきた。
「弥生ちゃん……」
「蒼真さんが訪ねてきませんでしたか?」
「うん、一様話をしたよ?」
「そうですか……あ、夕飯は学食へ行きます? それとも、私がお作りしましょうか?」
「……ねぇ? 弥生ちゃん」
「はい?」
俺はふと彼女にこう問う。
「……どうして、俺にここまで尽くしてくれるの?」
「え……?」
「いや、俺って……今まで、ここまで女の子に優しくされたことなかったからさ?」
「……」
弥生は、静かに俺の隣に座った。
「……今、じゃなければダメですか?」
「……?」
「ごめんなさい……それを答えるにはもう少し時間がいります。それまで待ってくださいませんか?」
彼女は顔を赤くして、ソッポを向いた。
「そ、そう……」
「でも……私は、貴方だからこそ、ここまでしたいの」
「え?」
「べ、別に! 皆さんのことは好きですよ? でも……狼君だけは特別だから」
最後のところは聞き取りづらかった。しかし、彼女は俺のことを大切に思ってくれていることだけはわかった気がする。
「あの……私からも、一つお聞きしてもいいですか?」
隣に座る彼女は、俺の視界からひょっこりと顔を出して俺を見た。
「あ、うん……」
「突然で、今の貴方には大変失礼ですけど……明日のトーナメント戦、どうなさるんですか?」
微
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