4部分:第四章
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第四章
「ハイビスカスの香水。どう?」
「つまり中に入るのね。絶対に」
「今更って気もするけれど。その言葉は」
伸介が突っ込みを入れてきた。
「とにかく行くわよ。いいわね」
「わかったわよ」
玲子はそのハイビスカスの香水をたっぷりとかけてから校門を乗り越えた。真夜中の学校の中は完全に静まり返っていてそれだけで不気味なものがある。今五人はその中に潜入したのであった。まずはその不気味な沈黙が彼等を出迎えたのだった。
校庭もそうであった。校門からすぐに校庭であったがそこにあるのは何もなかった。そこにいるのも朝香達五人だけであった。
「誰もいないわね」
「今のところはね」
朝香が玲子に答える。
「けれどすぐに」
「変なこと言わないでよ」
玲子は朝香に対して言い返した。
「本当に出て来たら」
「それが面白いんじゃねえか」
賢治は玲子の言葉を聞いて楽しそうに言ってきた。
「鬼が出るか蛇が出るかってな」
「妖怪がね」
伸介もそれに続く。
「出るのかな、本当に」
「噂が本当だったらね」
勝也も言った。
「出るかもね。そうしたら」
「出ないに決まってるじゃない」
今の玲子の言葉は完全に願望であった。出て欲しくはないという。
「そんなの」
「そんなこと言ってると出るのよね」
「そうそう」
その玲子の言葉に朝香と賢治が突っ込みを入れる。
「大抵ね」
「それも後ろから」
「えっ!?」
今の賢治の言葉にびくっとした玲子は慌てて後ろを振り向く。だが幸いにしてそこには誰もいなかったし何もなかった。彼女はまずはそのことにほっと安堵するのだった。
「よかった、いなかったわ」
「怖がりねえ、本当に」
「仕方ないじゃない」
からかってくる朝香に言い返す。
「何が出てもおかしくない状況だし」
「だからそれを見る為にここにいるんだろ?」
賢治がまた玲子に言う。話しながら辺りを見回す。
「まあ今は何も見当たらないけれどな」
「そうだね」
伸介は周りを懐中電灯で照らしながら見回していた。
「いないね。何も」
「こっちも」
勝也も懐中電灯を使っていた。しかしそれでも何も誰も見当たらないのだった。
「校舎は・・・・・・何もないか」
「そっちは聞いていないわ」
朝香が勝也に応えた。
「だから別にいいんじゃない?」
「そう。それじゃあ」
「そっちはいいってことで」
二人は朝香のその言葉に頷く。玲子は校舎に入らないと聞いていささか嬉しそうであった。
「まああの中は必要ないしね。入ったらもっと怖いし」
「本音出てるわよ」
今度は朝香が突っ込みを入れる。どうにも素直な玲子であった。
何はともあれ校庭を見回す。すると。
「んっ!?」
最初に気付いたのは伸介
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ