第四章
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「何かな」
「ああ、景気悪いな」
「どうにもな」
「ものが売れない」
「客も少ない」
「そもそもものを作る材料にも困って」
「金の価値も下がってるな」
どうにもというのだ。
「戦争に勝ったのにな」
「そういえば前の戦争でもな」
第一次世界大戦の時のことをだ、彼等はここで思い出した。
「勝ったことは勝ったが」
「それでもな」
「戦争で力使い過ぎてな」
「後が大変だったな」
経済はおろか国全体が疲弊しきってだ。
「それで今回もか」
「そうなるのか?」
「国全体が疲れきっていて」
「だから客が少なくて」
「ものが売れないのか」
物資不足でかつインフレも起こっているというのだ。
「勝ってもな」
「豚共がいなくなってもな」
「俺達が得たものってな」
「こんなものかよ」
疲弊、国家全体のというのだ。
「それこそな」
「そうしたものしかないのかよ」
「何なんだよ、それ」
「折角戦争に勝ったのにな」
「何もないのかよ」
「豚共を散々裁いたのにな」
彼等が正義と信じていたそれもだった。
「どうしてなんだ」
「何で俺達はこんな状況なんだ」
「国がぼろぼろのままで」
「疲れきっているんだ」
「これはおかしいだろ」
ニコルは戦争中よりも質が悪くなっているまずい酒を飲みつつだ、仲間達に言った。店の中も非常に荒れて始末な状況だ。
「勝って豚共を引きずり出して裁いた俺達がこんなに苦しいなんてな」
「ああ、勝ったのになんだ」
「どうしてこんなのなんだ」
「苦しいなんてな」
「どういうことなんだ」
他の者達も言うのだった、安いまずい強いだけが取り柄の酒を飲みつつ。
そしてだ、ニコルはこうも言った。
「あとな」
「あと?」
「あとどうしたんだ?」
「俺達を見る目がな」
「俺達の?」
「それか」
「何かな」
どうにもと言うのだった。
「冷たくないか?」
「ああ、そういえばな」
「娼婦連中からな」
「何かな」
「冷たいな」
「そんな目で見られてるな」
「そうだな」
仲間達もこのことに気付いた、ニコルに言われて。
「どうにもな」
「微妙にな」
「冷たいな」
「何でなんだ?」
「娼婦連中は俺達を冷たい目で見るんだ」
「俺達が何をやった」
「あいつ等には何もしていないぞ」
こう言うのだった。
「豚を裁いてやったんだ」
「ナチスに媚売っていた豚をな」
「それだけなのにな」
「あの連中は何で俺達をそんな目で見るんだ」
「英雄だぞ、俺達は」
こうも言ったのだった。
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