第三章
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そうしたことを延々と続けて終戦を迎えてだ、ニコル達は万歳をして言った。
「俺達は勝った!」
「勝ったんだ!」
「戦勝国だ!」
「俺達は正義だ!」
「悪いドイツをやっつけたんだ!」
「やったぞ!」
こう話してまた飲むのだった、そして終戦から暫くしてだった。
ニコルはふとだ、立ち止まってだった。
パリの娼婦達の中でドイツ軍の将兵を相手にしていた者達もビジー政府や民兵達もいなくなったのを見てだ。周りに言った。
「おい、誰もな」
「誰も?」
「どうしたんだ?」
「ああ、豚がいなくなったぞ」
ドイツ軍の将兵達に抱かれていた娼婦達がというのだ。
「もうな」
「そういえば最近な」
「豚共を摘発していないな」
「そして裁きも与えていないな」
「そうだな」
「もう全員裁き終えたのか?」
ニコルは怪訝な顔でこう言った。
「ひょっとして」
「そうかもな」
「俺達片っ端から豚を引きずり出したからな」
「それで裁きを与えてやったからな」
「あれだけやればな」
「そりゃいなくなるか」
「そうだな、じゃあな」
それならとだ、ニコルは仲間達に言った。
「仕事に戻るか」
「ああ、戦争も終わったしな」
「俺達の仕事するか」
「そうするか」
「俺はな」
ニコル自身はというと。
「タクシーの運転手するさ、パリで」
「御前元々馬丁だったしな」
「今度は車か」
「車動かしてか」
「それで飯食ってくんだな」
「そうするさ、車の動かし方はアメリカの奴等に教えてもらったしな」
アメリカ軍の兵士達にというのだ。
「中古のジープももらったしな」
「それをタクシーにしてか」
「それでか」
「飯食ってくんだな」
「そうするだ、また豚が出て来たらな」
見つけ出したらというのだ。
「制裁を加えてやろうな」
「そうだな、じゃあな」
「俺達も仕事をするか」
「戦争に勝ったしな」
このことに高揚感を抱いていてだ、彼等は先に明るいものを見ていた。それで働いてそうしてというのである。
「いい暮らししようぜ」
「戦争前以上のな」
「もうナチスの豚共もいなくなったんだ」
「奴等はもう追い出した」
「それならな」
「後は働いて」
「幸せにやっていこうな」
こう話してだった、彼等はそれぞれの仕事に就いた。だが。
ニコルはタクシーの運転手をしてもだった、思った以上に客が少なくて困った。連合軍の兵士達の相手はあったが。
フランス人達の客は少ない、それでだった。
彼は飲み屋で仲間にだ、こう言った。今はそれぞれの仕事に就いている彼等に。
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