暁 〜小説投稿サイト〜
憎しみは消え
第二章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 ドイツ軍の将兵達は彼等を一瞥もしなかった。ニコルはその彼等を見て自分達が勝ったと思ってだ。こう言ったのだった。
「あいつ等がいなくなったな」
「そうだな、憎い奴等がな」
「あいつ等は収容所で精々苦しめ」
「うんと辛い目に遭わせてやれ」
 自分達が収容所を管理している訳でもないがこう言ってだ、そしてだった。
 仲間達のうちの一人がだ、こう言ったのだった。
「おい、じゃあな」
「ああ、わかってるさ」
 ニコルがすぐに彼に応えた。
「ナチスに尻尾振ってた奴等をだな」
「そうだよ、あいつ等を裁いてやろうぜ」
「そうだな、あいつ等を片っ端から捕まえてな」
「裁いてやろうぜ」
 仲間達も口々に言う。
「制裁だ!」
「豚にへつらってた馬鹿共を裁け!」
「一匹も逃がすな!」
「全部捕まえて制裁を浴びせろ!」
「どんどん捕まえるんだ!」
 こう叫びながらだ、彼等は。
 ドイツに協力していた者達、ビジー政権の者達は言うまでもなくだった。民兵や密告者達にだった。
 娼婦達も捕まえた、ニコル達が襲い掛かったのは彼女達だった。
 仲間達全員でだ、娼婦達を殴り蹴り罵った。
「売国奴が!」
「ナチスの豚に抱かれたアバズレが!」
「豚に抱かれて嬉しかったか!」
「貰った金で贅沢してただろ!」
 散々罵りだ、そして。
 ニコルは自らだ、鋏とバリカンを出して仲間達に言った。
「おい、これでな」
「ああ、こいつ等の頭をな」
「刈ってだよな」
「丸刈りにしてやれ」
「そして服なんかひっぺがしちまえ」
「それで街中を歩かせてやれ」
 そうして晒しものにしろというのだ。
「身体にはハーケンクロイツ書いてやるか」
「ああ、ナチスに抱かれた豚だからな」
「豚には容赦するな」
「頭も丸刈りにしてやってだ」
「街を歩かせてやれ」
「これまでの罪を俺達が裁いてやるんだ」
 こう言ってだ、散々殴り蹴り罵った娼婦達にだった。
 彼等はさらに侮辱を与えた、髪の毛を丸刈りにして。
 服は剥がし身体には鉤十字を書いてだった。実際にパリを歩かせて街の人々に対して叫んだのだった。
「この連中がナチスの協力者だ!」
「ナチスの豚だぞ!」
「豚に抱かれた奴等だ!」
「豚の行進だ!」
 こう口々に叫ぶのだった、そうして市民達に注目させるのだった。
 市民達も彼女達を罵る、その有様を見てだった。ニコルは自分達の復讐が適ったことに満足していた。そのうえで。
 仲間達とだ、連合軍から貰った酒で乾杯しつつ言うのだった。
「正義だよな」
「俺達のやっていることはな」
「豚を裁いているんだ」
「国の裏切り者をな」
「売国奴をな」
 その娼婦達をというのだ。
「裁いているんだからな」
「俺達は正義だ」
「これからも裏切り者
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ