第四章
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「本当に笑うことあるのかしら」
「どうかしらね」
「そこはね」
「あそこまで無表情でね」
「無愛想だとね」
「ないんじゃない?」
「それこそね」
同僚達もこう桜に返す。
「あんな感じだと」
「私一度もあの人笑ったところ見たことないし」
「それ私もよ」
「私だってそうよ」
皆こう言うのだった。
「誰も笑ってるところ見たことないでしょ」
「だからね」
「あの人だけはね」
「ないんじゃないかしら」
「そうよね、やっぱりね」
桜もここで言う。
「ないわよね」
「鉄仮面っていうか」
「表情自体が変わらないから」
「それこそ」
こうしたことを話すのだった、そしてだった。
そうしたことを話してだ、そのうえで。
同僚の一人がだ、こうその場にいる全員に提案した。
「それでもいいお店だからまた行こうね」
「いいわね、確かにあの人無愛想だけれど」
「別に接客悪くないし」
「喋らないだけの人だから」
「いいわね」
桜は最後に頷いた。
「じゃあ今度ね」
「給料日の後でね」
「皆で行きましょう」
「それで飲みましょう」
「ええ、それじゃあね」
言いだしっぺの彼女も頷いてだ、そしてだった。
桜達は給料日の夜にそのバーに行った、するとこの日もだった。
バーテンダーは無表情だった、注文をしてもだ。
「わかりました」
「ではすぐに」
こう返すだけだった、そして。
黙々と仕事をしていた、一行はこの日はカウンターではなく席に座ってそうして飲んでいたが彼を横目で観ながら話した。
「やっぱりね」
「今日もいつも通りね」
「喋らないわね」
「無表情よね」
「それこそね」
こう話すのだった、彼が作ったカクテルを飲みながら。
「お酒は相変わらず美味しいけれど」
「そっちも相変わらずね」
「無愛想で」
「もう鉄仮面」
「そうした人なのね」
「どうしても」
「顔はいいのに」
桜はバーテンダーの顔を見てから残念そうに言った。
「そこが残念ね」
「そうよね、女の子にプレゼントとかもね」
「普通に貰えそうだけれど」
「そうした時もかしら」
「あんな感じ?」
「やっぱり鉄仮面みたいに無表情で」
「返事もね」
そちらもというのだ。
「無愛想で」
「殆ど反応なし」
「そうなのかしら」
「そうじゃないかしら、本当に何処かのスナイパーみたいね」
桜もこの漫画の主人公を連想した。
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