1部分:第一章
[2/2]
[9]前 最初 [2]次話
のに」
「逃げればいいじゃない」
朝香は軽い調子で彼女に言った。
「会ったら」
「無理よ」
玲子は顔を顰めさせてそれを否定した。
「だってあれでしょ?」
「あれって?」
「あいつ百メートルを三秒で走るのよね」
「ええ」
こうした都市伝説ではつきものであるが相手は異常に動きが速い。バイクよりも速い速度で追い掛けてくるという話もざらなのだ。この時もそうだった。
「絶対追いつかれるわよ。そうして」
「頭からバリバリとね」
「冗談じゃないわよ」
玲子はその整った口を尖らせて言った。
「まだ食べられたくないわよ」
「あたしはずっとよ、そんなの」
朝香もまた口を尖らせて述べた。
「食べられたい人間なんてそもそもいないわよ」
「そりゃそうだ」
賢治は朝香のその言葉を聞いて思わず笑った。
「僕だってそうだし」
「そうよね。けれど出るんだ」
「そこよ」
朝香は玲子の言葉に突っ込みを入れた。
「出るのよ。見たいような見たくないような」
「ちょっと朝香」
玲子は今の朝香の言葉に顔を露骨に曇らせてきた。
「あんた今何て言ったのよ」
「だから見たいような見たくないようなって」
朝香はしれっとして答える。
(そう言ったんだけれど」
「ちょっと、冗談じゃないわよ」
玲子はまた口を尖らせた。それでまた言うのだった。
[9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ