第一章
[2]次話
助け方
橋口久志は面長で引き締まった顔をしておりだ、強い光を放つ目に一文字の唇を持っているl。背は一八〇を超えている。
しかしスポーツは苦手でだ、よく周囲にぼやいていた。
「何でかわからないけれど」
「スポーツはだね」
「不得意だっていうんだね」
「何をしても駄目なんだ」
ことスポーツはとだ、彼はいつもぼやいていた。
「これが」
「マラソンも短距離も」
「砲丸投げもだね」
「高跳びも幅跳びも」
「どれもだね」
「背は高いけれどね」
橋口のぼやきは続いていた。
「それでもね」
「そうだよな、御前はな」
「運動は駄目だよな」
「成績は学年で一番でも」
「それでもな」
「参ったよ、夢はね」
橋口は自分の夢も話した。
「自衛官になることだっていうのに」
「防衛大学を出て」
「そして陸上自衛隊に入って」
「果ては髭の隊長みたいになる」
「あの人みたいになりたいんだったな」
「そうなんだけれどね」
自衛官になりたい、しかしというのだ。
「それがね」
「運動神経が駄目ならな」
「それならな」
「自衛隊って体力だからな」
「体力勝負だからな」
「自衛隊にテストで合格して入っても」
「やっていけるものじゃない」
橋口は自衛隊のことはもう知っていた、特に陸上自衛隊のことは。彼は陸上自衛隊に入りたいのだがここはだ。
「僕もわかってるよ」
「入隊してもな」
「後が大変だな」
「そうなったら」
「それこそ」
「とにかく僕は」
また言う橋口だった。
「運動は駄目なんだよ」
「幾ら何をしても」
「毎日トレーニングをしても」
「それでも」
「うん、ただ体力がつくだけで」
それでもというのだ。
「足は遅いし跳べないし飛ばせられない」
「運動神経が駄目だね」
「足腰が強いだけで」
「それだけで」
「何をやっても駄目だから」
運動神経が備わっていないというのだ。
「どうしてもね」
「じゃあ自衛官になることは」
「やっぱり無理か?」
「諦めるしかないか?」
「御前には気の毒だけれどな」
「そうかな、どうしてもなりたいけれど」
腕を組んでだ、橋口は苦しそうな顔で言った。
「それでも」
「他の仕事につくか?」
「官僚になるか?」
「いい大学の法学部に入ってそれで」
「そうするか?」
「それかな」
一人がこうも言った。
「御前理系もいいからな」
「理系だね」
「ああ、科学者になってもいいし」
橋口はとかく勉強が出来る、それこそ東大法学部でも京大医学部でも合格確実と先生からも言われているし模試の結果でも出ている。
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