第一章
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酒憂
王莽は漢の皇室の外戚の一族に生まれた。父も兄も早く死に最初は一族の中でうだつが上がらなかったがだ。
その取り入りのよさと芝居の巧さもあり次第に頭角を表し一族の出世頭となった。気付けば宰相になり遂にはだ。
漢王朝の皇位を簒奪する形で皇帝となった、皆彼を讃えまさに絶頂の極みにあった。
しかし皇帝となってからだ、王莽は次々にかつての周の様な政策を行い北の匈奴にも強硬な態度で挑んだがだ。
匈奴には敗れ政は全て失敗してだ、挙句に。
各地で反乱が起こった、それで彼が為したことは。
何も出来なかった、兵を送ろうとも常に敗れた、そして国はさらに乱れてだった。
彼が築いた新という国は瞬く間に瓦解した、これに意気消沈した王莽は気が滅入ってしまい何も食べられなくなった。
それでだ、日々だった。
鮑、干したそれを肴にして酒を飲みばかりとなった。その彼にまだかろうじて残っていた側近達が不安な顔になって言った。
「帝、あまりです」
「そこまで酒を飲まれてはです」
「お身体に障ります」
「よいことはありません」
こう言うのだった、ほぼ何も食べなくなり飲んでばかりになっている彼に。
だが王莽は沈んだ顔でだ、彼等に言った。
「大丈夫だ」
「といいますと」
「どういうことなのですか?」
「大丈夫とは」
「一体」
「酒を飲むとだ」
今も飲んでいる、そのうえでの言葉だ。
「気が晴れるのだ」
「気が、ですか」
「晴れるのですか」
「そうなるのですか」
「そうだ、だからだ」
その憂いに満ちそのうえ酒のせいで疲れきり目は澱んでしまっているその顔での言葉である。
「朕はこうしてだ」
「飲まれているのですか」
「酒を」
「憂いが尽きぬ」
最早彼の国はどうにもならない、その状況がわかっているかだ。
「ならばその憂いを消すのはだ」
「酒ですか」
「だからですか」
「今もそうしてですか」
「飲まれていますか」
「この憂いを消してくれる」
尽きぬそれをだ。
「まさに百薬の長なのだ」
「ではこれからも」
「飲まれるのですか」
「その様にされて」
「もっと持って来るのだ」
その酒をというのだ、丁渡尽きたからだ。
「鮑もだ、いいな」
「あの、酒はいいとしまして」
「鮑の他にも何かお召し上がり下さい」
「さもなければです」
「幾ら何でもです」
「他は何も食えぬ」
その憂い故にというのだ。
「だからだ」
「より、ですか」
「酒をですか」
「飲まれますか」
「酒は飲める」
今の王莽でもというのだ。
「だからだ。いいな」
「わかりました」
これ以上言っても無駄だと悟ってた、臣達もだ。
王莽に頭を垂れて応えた、そして酒と鮑を
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