第二章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
そしてここでだ、クラスメイト達にその北朝鮮のことを聞いた。
「あの国そんなええ国か?」
「何か新聞で色々言うてるな」
「学校の先生も」
彼と同じ詰襟で丸坊主の面々が応えた。
「もうあんまりにもええ国で」
「地上の楽園やってな」
「そこにいたら何の苦労もない」
「楽しくて仕方がない国やってな」
「そんな国ほんまにあるんかいな」
一樹は首を傾げさせてこう言った。
「お父ちゃん今朝それは嘘やって言ってたけど」
「けど前田先生いつも北朝鮮のこと言ってるけどな」
「日本よりずっとええ国って言ってるな」
「先生が言うからな」
「ほんまちゃうか?」
クラスメイト達は言うのだった。
「新聞でもえらい学者さんも言うてるし」
「新聞は嘘書かんで」
「しかもえらい学者さんも言うてるさかい」
「そやからな」
「ほんまちゃうか?」
「北朝鮮ってええ国ちゃうか?」
そうではないかというのだ、だがその彼等も一樹と同じくだ。
ことの真意はわからない、それでだった。
一樹は実際に北朝鮮がどういった国かわかりかねていた、父が正しいのか新聞や先生が正しいのかわかりかねていた。
それでだ、部活の後で先輩にも尋ねた。
「先輩北朝鮮についてどう思います?」
「あの国か」
「はい、どんな国やと思います?」
部室でユニフォームから制服に着替えながらの質問だ。
「一体」
「あの国な」
一呼吸置いてからだ、先輩は答えた。
「俺はよお知らん」
「そうですか」
「色々言われてるけれどな」
「ええ国でっしゃろか」
「どやろな、ただな」
「ただ?」
「何でもそやけどな」
着替えの中でズボンを穿きながらの言葉だ、制服の。
「うまい話には裏があるやろ」
「そう言われてますな」
「そうや、新聞とか先生の言うてること聞いてるとな」
北朝鮮にまつわる話だ。
「幾ら何でもな」
「うまい話ばかりやと」
「そう思えるわ」
「そうですか」
「何か詐欺師の口上みたいや」
先輩が言うにはだ。
「そう思えるわ」
「先輩はそう思われますか」
「実際はどんな国か知らんけれどな」
それでもというのだ。
「何か胡散臭いもん感じるな」
「胡散臭いですか」
「ああ、俺が思うだけやけどな」
先輩はこう前置きもした。
「何かあまりにもええ話過ぎるやろ」
「地上の楽園ですか」
「お医者さんの金もいらん、税金もない。働けば働くだけどんどん何もかもがよくなっていく」
北朝鮮側の主張もあげつらっていく。
「こんなうまい話あるか?」
「言われてみれば」
「世の中甘ないで」
「うまい話には裏があって」
「そや、新聞は嘘言わんっていうけど」
「新聞が嘘言うたらあかんのちゃいます?」
「けど誰でも嘘
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ