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死んだ目
第七章
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「ドイツの東、ソ連軍が占領している地域では」
「何処もですか」
「こんな調子らしいです」
「そうですか」
「どう思われますか」
 オーフェルはあらためてグラッグスに問うた。
「ソ連軍は」
「彼等によって平和はもたらされません」
 グラッグスは正直にだ、オーフェルに答えた。
「これは屈服、服従を強いるだけのものです」
「力のあるものが」
「三十年戦争での傭兵達と同じです」
 かつて暴虐の限りを尽くした彼等と、というのだ。
「全く」
「そうですね、ですが」
「これが平和をもたらす軍隊ですか」
「共産主義の軍隊です」
 オーフェルはまた言った。
「そうなのです」
「そうですね、学びなおします」
「共産主義について」
「そして共産主義国家について」
「ソ連から亡命した人もいますね」
「そうですね、その人ともお話をして」
 そしてというのだ。
「学びなおします」
「そうします、アメリカに戻ってから」
 グラッグスは肩を落として河に背を向けてジープに戻った、オーフェルはそのジープをまた自分が運転して橋を後にした。その道でもソ連軍の将兵達は我がもの顔出振舞っていて略奪や暴行を楽しみ続けていた。
 グラッグスはアメリカに戻って実際に共産主義を学びなおした、実際にソ連を知っている亡命者達とも会って話をして。
 そしてだった、彼は同僚達に目を伏せて言った。
「僕は間違っていたよ」
「最近共産主義について学びなおしていたけれど」
「そのことだね」
「共産主義についてだね」
「認識が間違っていたっていうんだね」
「そうだよ」
 その通りと答えたのだった。
「あの思想は人を幸せにしない、ソ連という国もね」
「ベルリンに行ってだね」
「ソ連軍を見て来たそうだけれど」
「噂では相当酷いらしいね」
「ナチスと変わらない位に」
「そうだったよ」
 まさにというのだ。
「小さな子供を殴り飛ばしたり略奪をしたり」
「女の人もだね」
「それこそ手当たり次第に」
「あんなことは正義じゃない」
 それこそというのだ。
「平等でもないしね」
「強い者、勝った者が負けた弱い者を虐げる」
「そうした状況だったんだね」
「そして共産主義は革命が起こってそこで全てが終わって」
 グラッグスは共産主義についても話した。
「そこから先がない、後は人が万能で何でも出来るって感じだけれど」
「そう上手くいくか」
「それもわからないね」
「実際のところは」
「そうだね」
「そうだよ、人のあることが何でも上手くいくか」
 グラッグスはこのこともわかっていた、学問だけでなくこれまでの人生経験から人生は常に上手くいくとは限らないものだということを知っているのだ。
「そんな筈がないよ」
「計画経済といっても
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