第二章
[8]前話 [2]次話
「冬はね」
「けれ東京の冬はだよな」
「ええ、秋田よりずっとあったかいから」
夫にも言っていた、いつも。
「平気だけれどね」
「それでもか」
「春は好きよ」
「そうだよな、じゃあ春になれば」
「春のお料理作るから」
「いや、お花見も行かないか?」
夫から私に誘ってくれた。
「靖国神社か何処かで」
「靖国、いいわね」
「やっぱり春は桜がないとな」
「ええ、まずはね」
「他にも色々あるけれどな」
「春は桜があって」
それにとだ、私はお鍋の中のきりたんぽ、大好きなのでお鍋にはいつも入れているそれを食べながら言った。
「その他にもね」
「一杯あるな」
「賑やかになるのよね」
「そうだよな、何かと」
「だから本当に好きなの」
「あとな」
ここで夫は私にまた言った。
「今は僕達は二人だけれど」
「あら、そういう意味でもなの」
「春になりたいな」
「じゃあ今夜もね」
「ああ、そうしような」
私達はくすりと笑ってこんな話もした、そして次の年の冬の終わりに男の子を授かった。すると秋田のお祖母ちゃんから祝いの手紙と品が届いた。
その手紙と品を見つつだ、私は一緒に見ている夫に切り出した。
「ねえ、春にお休み取って」
「秋田にかい?」
「行かない?」
こう夫に提案した。
「そうしない?」
「いいね」
夫は笑顔で私の提案に頷いてくれた。
「有給取ってね」
「そうしてね」
「秋田に帰省して」
「お祖母ちゃんに曾孫の顔見せたいわ」
子供を抱きかかえつつ夫に言った。
「この子をね」
「そうだね、一緒に秋田に帰省して」
「東京からは遠いけれど」
「今は新幹線が通ってるから」
昔よりはずっと楽だというのだ、そういえばもう何年も秋田に帰っていない。そう思うと余計に都合がいいことだった。
私は夫、そして子供と一緒に春に秋田に帰った、そして実家にいる両親と地元で働いているお兄ちゃんとも会って。
お祖母ちゃんにも会った、会ってすぐにだった。
抱いている子供を見せた、そうしてお祖母ちゃんに言った。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ