09.僕はキレた
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「離せ岸田!! 姉ちゃんが!! 姉ちゃんが!! ……離せぇエエエ!!!」
「落ち着けシュウ! 落ち着けって!!」
傷だらけの状態で倒れ伏し、ピクリとも動かない姉ちゃんを前にして、僕は頭に血が上っていた。岸田が僕を羽交い締めにし、必死に僕を制止するが、僕は怒りに任せて岸田を振りほどこうと暴れ周り、てれたびーずの船上で岸田ともみあった。
「落ち着けシュウ!! 泳いでいくつもりか!! みんなに任せろ!!」
「イヤだ!! 姉ちゃんが死ぬ!! 僕が行く!! 離せ岸田!! 離せぇぇエエエ!!」
岸田を引き剥がそうとするぼくと、僕を離すまいとする岸田のもみ合いが続く。僕が岸田の左腕を剥がせば岸田の右腕の力が強まり、それに僕が気を取られれば左腕が再度絡まる。僕が岸田をやっとの思いで完全に引き剥がし、てれたびーずから飛び降りて姉ちゃんの元に泳いでいこうとしたその時だった。
「シュウくん、どこに行くつもりデスカ?」
僕の前に金剛さんが立ちふさがった。金剛さんは、怒気こそ感じられないが、先ほど深海棲艦たちを睨んでいた時と変わらない表情で僕を見つめた。それでも僕の勢いは止まらず……
「姉ちゃんの元に行くんです! 泳いででも行きます!!」
そう答えた瞬間、金剛さんは僕の頬に平手打ちを浴びせた。人の何倍もの力を持つ艦娘の……ましてやその中でも特に力の強い戦艦クラスの金剛さん。その金剛さんの平手打ちの勢いは凄まじく、その一撃を受けた僕の身体は宙に浮き、そしててれたびーずの船体から飛び出して海に落ちた。
あまりに唐突のことで僕は意味が分からず、ただただ混乱していて、自分が今海に落ちたということを認識するのも不可能だった。ただ、呼吸が出来ず苦しいというシグナルしか僕の頭は発することが出来ず、必死に水中を掻いて水面上に出ようとする。だが僕の身体は鉛のように重くて、掻いても掻いても水面に上がることが出来ない。頭がパニックになり、呼吸も限界に来た頃、誰かの手が僕の襟を掴み、強引に海中から引っ張りあげられた。
海上に引っ張りあげられた僕は思い切りむせて、肺の中に入りかけた海水を必死に喉から絞り出した。依然ぼくは襟を掴まれて持ち上げられているのだが、その犯人が金剛さんだというのがわかったのは、ぼくがやっと呼吸が出来る程度に回復したときだった。
「シュウくん、少しは落ち着いたデスか?」
「こん……ごうさん……ゼハー……」
「シュウくん、絶対に我を忘れてはダメデス。戦場で取り乱して我を忘れたら……取り返しのつかない事態に陥ることもありマス。余計な犠牲を生むこともありマス」
「でも……ゼハー……でも姉ちゃんがッ……!!!」
「冷静になるネ。ワタシたちに任せて下サイ」
金剛さんは冷静にそう言うと、僕をてれたびーずの船上
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