09.僕はキレた
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世界が動き出した。レ級の砲撃音が再開し、水柱がてれたびーずを中心に複数発生した。
僕はというと、耳から水蒸気が吹き出さん勢いでキレていた。顔に血が集まっているのが分かる。怒りが収まらない。あの日のように、今また僕の前から消えようとする姉ちゃんへの怒りが収まらない。
「頭きた! もう頭きた!! ねえちゃん絶対連れて帰る!! ねえちゃんのわがままなんか聞いてやらんッ!! ケッコンだ! ケッコンしてやるッ!!」
「うん。まぁ……やる気満々になったのは素晴らしいでち」
「当たり前だッ!! そして罰として頭をなでなでわしゃわしゃしてもらうッ!!」
「なるほど……これが風呂あがりの比叡を怒るときのシュウくんなんデスネ。恐ろしいデース……ニヤニヤ」
「やかましいッ!! 絶対全員無事に帰る!! 絶対に帰るぞッ!!!」
『シュウくん』
再び、無線機から姉ちゃんの声が聞こえた。体力が限界に近いため力はこもってないが、さっき僕に退却を促した時と比べて、声に生気がある。少し元気が戻っているのが手に取るようにわかる。姉ちゃんを見ると、姉ちゃんは海面にペタンと腰を下ろしてはいたが、こっちを真っ直ぐ見つめるその顔に、さっきまでの脆さはなかった。
「なんだ姉ちゃん!!」
『さっきのはホント? お姉ちゃんとずっと一緒にいてくれる?』
「頼まれなくても嫌がられても一緒にいるッ!! 今日の今日までさんっざん僕を困らせたんだから、今度は僕のわがままに付き合ってもらうッ!!!」
『……分かった。私も……シュウくんと一緒にいたい』
「言われなくても助ける!! 絶対一緒に帰る!!」
決めた。絶対姉ちゃん連れて帰る。何がなんでも連れて帰る。指輪渡してあんな勝手なこと言えないようにしてやるこんちくしょう。消えてたまるか。姉ちゃん置いて向こうの世界になんて帰ってやらん。ムカつく。捕まえてやるから姉ちゃん覚悟しろ。
「シュウ」
「ぁあ?! なんだ岸田?!」
「決心ついたか?」
「当たり前だッ!! どんな手使ってでも連れて帰るからなッ!!」
さっきとは違う意味で頭に血が上っている僕は、岸田にも食って掛かった。岸田はそんな僕をたしなめることもせず、ニコニコと笑みを浮かべながら僕を見ている。でも目からは血の涙を流しており、そのおぞましさに僕の怒りは一瞬で沈静化し、ゴーヤは一瞬でドン引きした。
「き、岸田さん……その顔……ドン引きです……」
「深海棲艦よりもおぞましいでち……」
「悔しいが仕方ないッ」
岸田は無線機のスイッチを入れ、マイクを自分の口元に持ってきた。今ここで死力を尽くしている艦娘たちへの極秘通信だ。
「各員、てれたびーずに集まってくれ。これから“大海原でつかまえて大作戦”をはじめる」
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