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大海原でつかまえて
09.僕はキレた
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さんに上空から別の艦載機が近づいていた。さっきも聞いたキィィイイインという甲高い不快な音が、上空から聞こえる。

「加賀さん!! 上ッ!!」
「……ちいッ!」

 加賀さんは回避行動を取ろうとするが、すでに遅かった。『ドーン!!!』という音と共に加賀さんを中心に爆発が起こり、加賀さんの偽装の破片がこっちにまでたくさん飛んできた。どうやら相手は加賀さんめがけて急降下爆撃を行ったらしい。加賀さん自身の傷は言うほど大したことはなさそうだが、艤装の損傷が酷い。弓矢は問題ないようだが、肩に取り付けられた甲板が損傷し、艦載機の回収が困難となった。

「くッ……」
「加賀さんッ!!」
「私は大丈夫。あなたたちは自分のことだけ考え……木曾ッ!!」

 加賀さんがキソーさんの名を叫ぶのとほぼ同時に、キソーさんを中心に爆発が起こった。

「なッ?!」
「キソーさんッ!!」

 キソーさんの上空に、気持ち悪い亀裂が入った数機の丸い物体が浮かんでいる。その物体が上空からキソーさんを爆撃したようだ。その物体はキソーさんにダメージを与えたことを確認すると、速やかに自陣に戻っていく。どうやら空母棲鬼が発艦させた艦載機のようだ。空母棲鬼は丸い物体を回収すると、こちらを見てニヤリと笑う。

 爆発で立ち込めた粉塵が少しずつ引いてきた。煙の中で立つキソーさんは服と艤装がボロボロになっており、自慢のサーべルも歯がガタガタになっていた。

「……誰が涼しくしてくれなんて言ったよ」
「よかった……キソーさん無事でよかった……」
「心配無用だ」

 よかった。損害は被ったが無事なようだ。

 しかしたてつづけに3人が中破した。今までの順調な進軍がウソだったんじゃないかと思えるほどに敵が強い。突破口がまったく見えない。やはり懸念は当たっていたのか。これは姉ちゃんを餌にした罠だったのか。

 ゴーヤが浮上し、てれたびーずに乗船してきた。キソーさん以上に服と水着がボロボロになっている。ゴーヤが回収されたことで、潜水艦という目標を失ったレ級2隻の雨あられのような砲撃が始まった。岸田が巧みな舵さばきでてれたびーずを蛇行させる。しかしレ級の偏差射撃は思った以上に正確らしく、てれたびーずに着弾するかしないかギリギリのところをかすっていく。てれたびーずの周囲で水柱が上がり、轟音が僕と岸田の鼓膜に襲いかかる。

「岸田!!」
「ヤバいぞシュウ……ヤバイぞ!!」

 不意に、ピーピーという警告音が操舵室のモニターから鳴った。ぼくは操舵で必死な岸田に代わってモニターを見る。魚雷がてれたびーずの船体側面に向かって海中を走っているのが分かった。マズい。このコースだと命中する。この角度でてれたびーずに命中してしまうとひとたまりもない。

「岸田! 魚雷だ!!」
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